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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (4)

  • 雑で速いやつに対する説諭 - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。弊社ではそのために些末な打ち合わせもオンラインでおこなわれ、皆が慣れてきた今となってはリアルタイムの共同作業も気楽に実施されている。日は上司からの資料レビューであった。 上司:急ぎでイレギュラーな仕事やってもらっちゃってごめんね わたし:いえいえだいじょうぶです 上司:こういう差し込みの仕事、ガッてやってバッて出してくれるのほんと助かる わたし:いやあ、この程度でよろしければ 上司:あのね、できればこの程度じゃなくしてほしい 上司:あなたの仕事はいつもスピーディで対応も柔軟で素晴らしい。でも雑 わたし:あっそれが題ですね 上司:うん。赤字のところ見ておいて。とくに数字の誤字は致命的だからね。あと図の作りとレイアウト。せめて余白を左右対称にしてほしい。総じて雑 わたし:承知しました。赤線ありがとうございます。すごく直し

    雑で速いやつに対する説諭 - 傘をひらいて、空を
  • 十五歳までにしておくべきこと - 傘をひらいて、空を

    私が中学生だったころ、誰かとつきあっている女の子は、ときどき自転車に乗らずに学校に来ていた。男の子の自転車の後ろに乗せてもらって帰るためだ。彼女たちは少しはずかしそうに、でもどこか誇らしげに、幼い「彼氏」の肩に手をかけて河川敷を走っていった。ときどきどちらかが何か言い、ふたりで笑っていた。何を話しているのかな、と私は思った。とってもうれしそうだ。私もいつかああいうことをするのかしら。 十九になったとき、仲の良かった男の子が川の近くに住んでいた。私は彼に訊いた。自転車もってる、あのね、自転車の後ろに乗せてほしいの、そういうのやってみたかったの。 彼は親切な男の子だったので、もちろんそうしてくれた。春の終わりの晴れた日の、風の弱いきれいな昼下がりに。でもそれはただの二人乗りだった。その日はただの春の日で、私たちがしたことはただのデートだった。 私はありがとうと言った。私はかなしかった。私はもう

    十五歳までにしておくべきこと - 傘をひらいて、空を
    highcampus
    highcampus 2011/10/03
    "そのときだけ特別に感じられることは、この先にもきっとあるはずなのだ。"
  • 二重写しの視界 - 傘をひらいて、空を

    彼のあいさつを聞いて、堂々としている、と私は思った。とても、堂々としている、このひとはまるで、失敗したことがないみたいだ。 彼はずいぶんと名のある企業から、若いうちに裁量を与えられたくて転職してきたというのだった。いかにもさわやかな様子だったので、お酒の席で、久々のヒット、などという女性たちもいた。マキノさんはどう、と訊かれて私はあいまいに笑い、首を横に振った。どうしてと訊かれて、私は、はじらいのない 人は、なんだかいやだ、と思って、でも言えないから、だって、年下でしょう、とこたえた。いくつも変わらないじゃない、マキノさん古いんだから。そう言われて私はもう一度、あいまいに笑った。 ほどなく、彼に関する噂を聞かなくなった。みんなそれに飽きたのだ。でも私は飽きなかった。彼のたたずまいはどこか奇妙な余韻を感じさせた。それは決して快い感覚ではなかった。彼は相変わらず、ひどく堂々としていた。 彼は七

    二重写しの視界 - 傘をひらいて、空を
    highcampus
    highcampus 2011/07/21
    "はじらいのない人は、なんだかいやだ" "リアルな認識の上に、もうひとつ、彼らの望む認識を被せている。でも、下のレイヤは消えない、そして彼らを、いつも脅かしている"
  • まっとうであるとはどのようなことか - 傘をひらいて、空を

    私の職場に非常にまっとうな感受性を持つ若者がいて、私は彼のすすめる映画はなるべく観るようにしている。 職場での会話は、美容師との会話に似ている。当たり障りのないことが必要なので、「こいつとはこの話」と決まったら、しばらくそれが続くのだ。私は彼に「こいつとは映画の話」と認知されたらしく、しょっちゅう映画の話が出る。 ある日、彼はすごく腹を立てていた。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を観たのだという。 「なんですかあれは。なんというひどい映画。なぜ『私はやってません』と言わない。言えばいいじゃないか。死ぬ気になればなんでもできるだろ。だまって死ぬな、ばかやろう」 私はひどく感心した。私はあの映画を観て号泣したんだけど、考えてみれば、だまって死ぬのはやっぱり間違っている。なんという健全な感受性だろう、と私は思った。 まっとうであるとはどのようなことか、いろんな人がいろんな定義をする。私にとってまと

    まっとうであるとはどのようなことか - 傘をひらいて、空を
    highcampus
    highcampus 2010/01/31
    "まっとうであるとはどのようなことか、いろんな人がいろんな定義をする。私にとってまともであるということは、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を観て本気で腹を立てるというようなことだ。そう思った"
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