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ブックマーク / note.com/mugi2434 (3)

  • 小説 『夜なく蝉たち』|家長むぎ

    PDF版は電子書籍のような形で読めます。 指先の微熱、ほんの少し角張った第二関節。絡まっていた指がほどけたときの静かな寂しさと、またすぐに僕の指を手繰ろうとする触り。たとえ目を閉じていようとも、何の欠落もなく完璧に伝わってくる。それが不意であることは一度もない。僕は幸せだ。 何も間違っていない。僕は愛情で満たされた浴槽に浸かっている。いつか誰かにこの温かさを譲らなくてはならないときが、あるいはもう浸かり続けることに耐えられなくなってしまったときが訪れようとも、きっと正しかったと思うだろう。 ひとり用の浴槽。かじかんだ爪先と指先を温めてくれる、僕だけのものだ。けれど、僕は形のない何かに怯えて、何かというものが形を持たないせいで、その浴槽に浸かりながらもふと栓を抜いてしまう。まだここにいても良いのにもかかわらず。お湯が全部抜けたあと、空っぽの浴槽で僕はひどく安堵する。 不安。不安を感じるのは、

    小説 『夜なく蝉たち』|家長むぎ
  • 2021/04/29 「ハピトリで歌動画を出したよのあれこれ」|家長むぎ

    ハピトリで『アンノウン・マザーグース』を歌いました。 配信でもある程度語ったけれど、つらつら残しておきます。これは、ハピトリの総意ではなく、むぎ個人の、この動画を作る際に秘めていた想いです。大前提として、ハピトリで何か遺したい、と強く願っている自分がいます。 このカバー動画は、ファンメイドの人力動画を元に歌わせていただきました。配信から声の音素を取って、少しずつ声にしていくというもの....らしいです。 人力動画の投稿は2020年の6月。そこから大体一年弱経った今、ハピトリ3周年を迎えるこの日に歌えたことを、歌わせていただけたことをとても嬉しく思っています。 人力動画の製作者の方は、今日を『魂が宿る日』と呟いていたけれど、むぎたちはもうずっと前から、人力動画が投稿されたその日にはもう『魂は宿っていた』と思います。今日、手足が動いたというイメージです。 人力動画って、イラストとかのファンアー

    2021/04/29 「ハピトリで歌動画を出したよのあれこれ」|家長むぎ
  • 『麻痺』2021/01/07|家長むぎ|note

    Vtuberとして活動を初めて、大分経つ。時の流れは早く、『もう今月も終わりか』を何回も繰り返してきた。歳を取るようになってから時間経過の体感速度はどんどんと上がるばかりで、砂時計のくびれは太くなっているようだ。刺繍糸のように、つうっと流れていた砂は頼りなかったが、今この瞬間の、毛糸くらいの太さで流れていく砂は安心感がある。程よくぬるい。 配信で何度か口にした記憶があるが、Vtuberをしているうちに自分のなにかが『麻痺』した。 些細な言葉で傷付かなくなった。むぎのような子供にだって冷ややかな言葉を投げる存在がいることを知り、その言葉を正面から受け止め、傷付いていた。やがてその言葉に背を向けるようになり、さらに時間が経ち、気付けば正面から飛んできても、自分をするっとすり抜ける... 或いは、刺さらずに落下するようになっていた。『むぎ、こんなこと言われてるよ』と他人相手に心を傷める数少ない友

    『麻痺』2021/01/07|家長むぎ|note
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