なんとなく読むのを避けていたのだが先日、ツイッターのタイムラインで川上弘美の「ニシノユキヒコの恋と冒険」を見かけ、ふと読んでみたい気がした。その気分だけで読んでみた。 どんな女からももモテモテの男性、ニシノユキヒコの恋の人生の物語。彼を恋した女たちがその人生で遭遇した彼の相貌をそれぞれに描き出した掌編群。気色の悪い小説でもある。それほど広く読まれるというタイプの小説でもないし、「溺レる」(参照)に比べて文学性に富むという作品でもない。が、三十も過ぎた男女で恋愛の悪趣味も趣味のうちという人にとっては、なかなかに笑える小説でもあるし、読んで笑いながら、内面、ぐさぐさくる。僕なんか、絶叫して目覚める悪夢見ちゃいましたよ。 1970年生まれの西野幸彦は、清楚でルックスもよく、それでいて気弱げで母性を誘うというのか、女なら一目で惹かれるタイプの男である。女の扱いもうまく、するすると気安く女との一線を