読売ウイークリー誌2007年3月18日号 著者:川村敏久(ジャーナリスト) 50年か70年か、それが問題だ。小説や漫画などの著作権の保護期間延長をめぐって、小説家・漫画家・脚本家・評論家など文化人の間で、大論争が巻き起こっている。 「権利は孫や、ひ孫の世代まで引き継がれるべき」なのか、それとも「新たな創作のマイナスになるから延長すべきでない」のか。結論次第では、これまで手軽に読んだり観たりできていた著作権切れの小説などの範囲が狭まる可能性がある。私たちの文化生活にも、影響が及ぶ大事な話なのだ。 作家の三田誠広氏が言う。氏は日本文藝家協会副理事長で、著作権問題を担当している。 「太宰治の『桜桃』に出てくる子どもは、さくらんぼが食べられなかった。酒飲みの小説家の父のために。その『桜桃』も、すでに太宰の死後50年を過ぎているため、自由に利用されている。二女の津島佑子さんは今もお元気なのに、その父