前日、前々日と、小説新潮連載版の最終取材となる 突発的東京麺食い編を終えた椎名さんは ぶ然とした表情を浮かべていた。 「二日間、東京の店をはしごしてさ。 行列のできる店に何軒か行ったんだ」 「どのラーメン屋ですか?」 「やっぱりそう思うよな。実際、行列のできる店は ほとんどラーメン屋なんだけど、なぜだかわかるか?」 「そういえば、なんでラーメン屋だけなのかなあ」 「その前にひとつ断っておくと、 東京は地方に比べると、圧倒的に店の数が多い。 だから、東京と地方では行列の意味が違う。 店の少ない地方で行列ができる店っていうのは、 その土地の味のストライクゾーンのど真ん中をいっている。 ヨソ者は違和感を覚える場合もあるけれど、 何か光るモノがあることは確かだよ」 「なるほど。それで、東京の行列のできる店はどうでした?」 「どこもたいしたことない」 「えっ!?」 「行列ができるかどうかは、あるかな