有名な漢方薬に、”麦門冬湯(ばくもんどうとう)”というのがあります。 痰が出てこない、コンコンとするような空咳に用います。「咳に麦門冬湯」というような覚え方だとよろしくなく、痰がたくさん出るような咳にも使ってしまうかも。それだと逆に悪化しますよ(何故か改善するという不思議な事態もありますが)。同じ咳でも、いわゆる”湿性の咳”と”乾性の咳”とでは、出す漢方薬は全く異なります。 この麦門冬湯、生薬を見てみましょう。 麦門冬、半夏、人参、粳米、大棗、甘草 鎮咳作用は、半夏が担っています。去痰作用もしっかりと存在。しかしこの半夏、身体を乾かす作用がありまして(燥性)、空咳にこれだけだと非常によろしくない。 そこで、残りの麦門冬、人参、粳米、大棗、甘草です。これらは全て身体を潤す作用があり(潤性)、半夏の乾かす作用を補って余りあるのでございます。気道を潤すことで、咳を止めようと言う意味合いもあります