パウル・クレー Paul Klee(1879-1940) この世では私は理解されない。 いまだ生をうけてないものや、死者のもとに私がいるからだ。創造の魂に普通よりも近付いているからだ。 だが、それほど近付いたわけでもあるまい。 「忘れっぽい天使」1939 「また忘れちゃったの」と呟きながら、 そっとうつむきはにかんだ笑みを口元に浮かべる。 それは幼いあどけなさに見えて、 老いるにつれて子供に還る老人のものかもしれない。 なんと、いとしむべき、その無垢。 無垢な絵。あどけなさの残る幼な児がクレヨンでごしごしとえがくような、はかなげで暖かく、それでいて何かハッとさせられるクレーの絵。絵というよりもむしろ、スピリチュアルな象徴(サイン)・・・。これを描く画家とはどんな人だったのだろう?クレーの作品に触れた人はそう不思議に思うことだろう。 パウル・クレーはスイスの首都ベルンでドイツ人音楽家の両親の