写真を“産む” -- 有田泰而の「First Born」を巡って 飯沢耕太郎(写真評論家) 有田泰而と彼の写真に対して、それほど深くかかわってきたわけではない。むろん雑誌等で彼の作品を目にする機会はたくさんあったし、個展にも足を運んでいた。1982年の絵画の個展「18枚の絵」(トーキョー・デザイナーズ・スペース)の時だったと思う。会場で黒のスーツに蝶ネクタイ姿の彼と立ち話をしたのをおぼろげに覚えている。写真家が自作の絵を発表することについて、照れくさそうに「こんなことを始めちゃって」などと話してくれた。 そんな淡い、断片的な記憶しかない有田の仕事の中で、例外的にいつでも鮮やかによみがえってくるのが「First Born」である。このシリーズの中の何枚かの写真、そしてそれらが『カメラ毎日』の誌面におさまっていた、そのたたずまいまでもがくっきりと脳裏に刻みつけられているのだ。しかもその記憶は薄
![First Born - Taiji Arita | Gallery 916](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/106a44f458fb0b0563ee9dafb7022501afbdc5d8/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fgallery916.com%2Fexhibition%2Ffirstborn%2Fimages%2FlistPhoto-001.jpg)