トップ > 特集・連載 > ドナルド・キーンの東京下町日記 > 記事一覧 > 記事 【ドナルド・キーンの東京下町日記】 三島への戯れ 癒えぬ痛みに Tweet 2012年12月2日 地元商店街の「フタバ書店」を訪れたドナルド・キーンさん=東京都北区で(淡路久喜撮影) ちょうど五十年前に発表された、三島由紀夫の『美しい星』(新潮文庫)が、再び売れていると聞いた。美しい星とは地球のこと。空飛ぶ円盤を見た一家が、自分たちは地球外から来た宇宙人だという意識を持ち、米国とソ連が対立する東西冷戦下に、核戦争を防ごうと奮闘する話だ。三島としては目立って前衛的な作品だった。 東日本大震災による原発事故後に、私たち日本人はセシウムなどの放射性物質の恐怖に直面した。それに触発されたのだろう。この出版不況に、三島作品が売れるのはうれしいことである。 私が三島と初めて会ったのはこの東京。編集者の計らいで、一九五四
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