「研究者が書いた本」について原稿を、というご依頼をいただき、ざっと店内の本棚をみわたしてみたが、よくよく考えてみればどこからどこまでが研究者による本なのかがわからない。奥付を開き、著者プロフィールに目を通してみれば、なるほど研究者であるという肩書は散見できるものの、それによって共通点や特色のようなものを見いだせるわけではない。反対に、著者プロフィール欄に研究者という表記がなくとも、いかにも「研究者が書いた本」らしい印象をうけるものもある。 目についた本を棚から取り出してみよう。例えば、『イスラエルに揺れる』はモデルである著者がみずからの生い立ちからイスラエル文化を考察するエッセイ。『文字の食卓』は活字に魅了された文筆家が、あらゆる分野の書籍に使用された書体を取り出し、内容と文字の相性や機能を論じたもの。『黄色い部屋はいかに改装されたか?』は作家都筑道夫が本格推理小説の「おもしろさ」の構造を
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