個人の強い想いから出発したビジネスを、事業として継続的に育てていくのは簡単なことではない。だからこそ、その両立に挑む人の姿は美しい。“1冊の本だけを売る”森岡書店の店主、森岡督行さんのビジネスと向き合う姿勢からは、大量消費・大量生産の時代に、個人や会社が見失いやすい何かが見えてくる。 大学生の頃「ビジネス」という言葉が苦手だった。当時、私はこの言葉に人や社会への想いは二の次、ただ利益を追求する手段、という印象を抱いていた。今思えば、かなり浅はかだった。 社会人になって数年。心から共感できる活動が十分な収益を立てられず、ゆるやかに後退していく様子を何度か目にした。想いを形にし、誰かに届け、社会をよりよくしていくために、「ビジネス」は不可欠なのだと痛感した。 学生時代の偏った見方を恥じるとともに、確固たる思想を保ったまま、事業を伸ばしている人の姿に、強く惹かれるようになった。 “1冊の本だけを