納税者勝訴 武富士元会長の長男が起こした租税返還訴訟を例に、税務当局の論理と裁判所の判断を見ていこう。 一審(東京地裁)ではまず、香港に居住していたとされる3年あまり、税務当局が所得税を課していないことが争点となった。所得税も贈与税も住所によって課税の是非が判断されるのだから、所得税を課さないのであれば贈与税も非課税であるはずだし、贈与税を課税するのなら所得税分も追徴課税すべきだからだ。 これに対して税務当局は、「所得税の住所と贈与税における住所は必ずしも同一ではない」と反論した。所得税はその年度ごとに納める税金なのに対し、贈与や相続は通常1回かぎりであり、それ以前の個人史(居住暦)すべてが考慮の対象となるというのだが、この論理は一審判決では退けられている。 現実には、香港在任中の長男の所得は大半が香港に設立した法人から支払われており、課税は困難であった。そのため、住所の判断で二重基準(ダ