近年、ミステリー界では「北欧ミステリー」のジャンルが人気を博している。毎月のように翻訳本が出版され、北欧で書かれたミステリーの映像化を観る機会も増えてきた。一体なぜ、北欧生まれの作品が人気なのか? その独自の魅力を、海外ミステリーに詳しい書評ライター・杉江松恋さんに聞いた。 “社会批判をする媒体”として確立された北欧ミステリー 最近、書店で海外ミステリーの棚を見るたびに「北欧」の文字が目につくようになった。手に取って読んでみると、最初は慣れない登場人物の名前に戸惑うものの、物語の背景に漂ううっすらと暗い雰囲気や、ダイナミックな犯罪描写、スリリングな展開、派手ではないが丁寧に生活している登場人物の様子などが垣間見えて、北欧ミステリーの世界にハマった。その丁寧な構成は、書店で見かけるほとんどの北欧ミステリーに共通しているようだ。 なぜ北欧(なかでもスウェーデンの作品が多い)で書かれた作品に、良