雪が降ると、北で育った子供の頃のことを思い出します。 中学生のときのことです。その日は朝から雪が降り続けていました。 帰り道、私がバス停に行くと知り合いのおばあさんが、にこにこと話しかけてきました。 一時間に一本しか通らないそのバスは利用者もきわめて少なく、バス停で私はいつも一人でした。 「おでかけですか? めずらしいですね」 おばあさんは嬉しそうに笑いました。 「息子たちの顔が早く見たくて」 街に住んでいる息子一家がバスに乗って来るから待ちきれなくて迎えにきたのだと、おばあさんは言いました。 おばあさんの家はバス停から20分ほど歩いたところにありました。遠いというほどではありませんが、雪の中歩くのに楽な距離ではありません。 私たちはバスが来るまでしばらく話をしました。体の芯から冷えるような日で、私は時々その場で足踏みをしながら、暖かいバスが来るのを心待ちにしていました。 ついさっき来たば