フェナキスティスコープやゾートロープといった映画前史に登場するような過去の映像装置が,モニターをストロボ光源とするアイディアと組み合わされ,円盤の上に載った人形が動きはじめる.ストロボの点滅速度は音楽に合わせていろいろな変化をするので,人形の動きも変わっていく. 鉛筆の線や粘土,紙,フィルムなど素材は何であれ,それらが動き出す瞬間を私たちはいつも新鮮な驚きをもって見つめる.時間と空間が一体化したようなイメージにおいて,自分が見ているものを他者が共有していることの不思議さと悦びが入り混じる.岩井が発表してきた多くの作品は,こうした作者の創造のプロセスを,鑑賞者が具体的に体験できるようなところに面白さがある. 「第17回現代日本美術展」(1985)にて大賞を受賞した作品であり,〈ハイテクノロジー〉志向が強まる時代にあって,高度な技術を隠すのではなく,むしろ仕組みを露出させる手法にも大きな関心が