岩井俊二さん=東京都港区、山本裕之撮影 ■被爆国から2013 映画監督・岩井俊二さん 【聞き手・木村司】広島や長崎に原爆が落とされる前にも、日本中に訓練のための模擬爆弾が落とされ、たくさんの人が亡くなりました。二つの被爆地をはじめ、各地で被害にあった人たちが体験を語り継いできたので、私たちの耳にも入る。広島、長崎がいまだに一つの大きなシンボルであるのは、語り伝えることをずっとやり遂げてきた人たちの力だと思います。 ■軽んじた警告 私の性質なのか、映画監督という仕事のせいなのか、自分が死ぬことについて1日に1回くらい考えながら生きています。そんな私にとって8月6日は、1年で一番、死者について考える日になりました。井伏鱒二の「黒い雨」や、(被爆体験を描いた)原民喜の「夏の花」も読みました。ただ、これらは文学的な体験でしかなく、戦後に生まれた者として、テレビで伝えられる毎夏のセレモニーを神妙