会社にだるま屋さんが来年のダルマを持ってきてくれた。年末にしか顔を見ないおじいさんなのだけどその顔を見ると、言い逃れできないほど今年ももう終わってしまうのだなあと実感する。何度も繰り返される忘年会よりよっぽど暮れっぽい。この先は泣き言に近いから畳む。 だるま代金を支払いお釣りを受け取り、おじいさんが手提げ鞄に代金をスローモーな手捌きで仕舞うのを眺めていたら「お母さん元気?」と言われた。「うん、元気」と返事をすると、親父が亡くなってから寂しいだろうねとかそんなことを話始めた。たいがいこういう場合の定型文として「まあ貧乏暇なしで忙しくしてるから寂しがってる暇もない」と言うわけで、おじいさんにも抑揚のない感じでそう言った。別に同情されたくないとかそんなんではないのだけど、事実そんな日々だし母ちゃんにしても寂しくて寂しくてという様子もないわけで。おじいさんは唐突に親父が入院していた頃の話を始めた。