今日、多くの日本人は国家主権や領土といった問題に敏感になっている。ただ、私は最近まで、たとえばなぜ尖閣諸島が日本の領土だといえるのか、その経緯や理由を知らなかった。言い換えれば、今の国境線がなぜいかにして引かれたのか、その歴史的な事情について、十分「教育」を受けたという記憶がないのである。 今回、自分なりにいろいろ調べてみたので、とりあえずメモをとっておきたい。 テッサ・モーリス=スズキ氏は、「マイノリティと国民国家の未来」(2003年)という論文で、近代日本における国境の確定や境界線の移動といったテーマをとりあげている。 たとえば「固有の領土」というような言い方は、あたかも古来より「日本」という国の確定した「領土」が定まっていたかのような錯覚を起こさせるが、スズキ氏が指摘するのは、近代における国境線の線引きはあらかじめ「確定」したものでも一回限りのものでもなく、繰り返し線引きの変更が行