(展開に触れているので未見の方はご注意を) 例えば地球に不時着して難民キャンプでの暮らしを強いられるエイリアンの造形がエビのようなデザインではなく、人間の耳が少し尖がっただけでピタピタの衣装に身を包んだエイリアンだったら、と想像してみてほしい。「第9地区」は恐らくあそこまでの大ヒットには至らなかったはずだ。問題に晒されている者を異化するということは、現実としての酷い問題を「ひとまず置いておける」ということであり、監督のニール・ブロムカンプは、かつてのケープタウンの「第6地区」を異化して、新たな物語を構築することに成功した。 ブロムカンプの新作「エリジウム」は、地球の環境汚染が進み、経済的に余裕がある人々は地球は見捨ててスペースコロニー「エリジウム」に移住し、それが不可能な貧しい人々は地球にとどまって暮らしている、という設定の物語だ。この設定自体はなんら目新しいモノではなく、それこそ「ブレー