『華麗なるギャツビー』は1920年代のアメリカを舞台に、ハイスピードな資本主義社会のなかで失われゆく純粋な理想をいとおしむ物語である。今回のバズ・ラーマンの映画は、原作のなかでもとくにその思想を伝える部分がクローズアップされており、よりわかりやすい形で示される。これはアメリカの失われた理想を取り戻そうとする物語だ。 ギャツビーは荒野で育った貧民である。後ろ盾も血筋もない。しかし自分には神に愛されたあふれる才能があると信じ、広い世界に飛び出す。すばらしい恋に落ちる。 アメリカの理想は本来、ギャツビーに味方するはずだ。何も持たないものでも、才能と意志さえあれば幸福をつかむことができる。階級社会を否定し、貧富の格差を否定し、アメリカはそうやって作られた国家のはずだった。 しかし彼は、血筋と金をもつ男に奪われて、一度は愛する女を失う。 こんなはずではなかった。神に祝福された男ギャツビーの人生はこの