一ヶ月ほど前。 インターネットを通じて、とある女性と知り合った。 僕と彼女は、何度かチャットをしているうちに自然と仲良くなった。 僕は、彼女がどんな人間であるのかを考えるようになった。 彼女の生い立ちや性格、そして顔を、想像の中で作り上げていったのだ。 彼女は頭がいい。 誤字が少なく、語彙は多い。 ただし、顔文字やスラングは使わない。 一回の発言はとても簡潔で明瞭だ。 いつも夜の十時ごろにログインして、日付が変わったころに消える。 彼女の発言。 《あなたの顔は見えないけど、きっと美形だと思っているの》 《僕もだ》と返す。 《きっと君は美人なんだろう》 何秒かの無言。 《そんなことないわよ》 それでやりとりが終わる。 僕らは互いに、顔の見えない相手の顔を想像していた。 オフラインでは会わなかった。写真を送りもしなかった。 僕らはそれで幸せだった。 幸せだった、と過去形で書いたのは、昨日、状況