そして08年5月のある日。誰かが自分の書き込みを真似して、まるで自分のように掲示板の住民と「会話」していた。その偽物にあおられ、掲示板を荒らす者すら現れた。「人間関係が奪われたように感じた」。成りすましを排除するよう管理人にメールしたが、返信はない。そこで抗議の意思を伝えるために、事件を考えた──。 加藤被告は、現実では決して孤独ではなかった。中学時代は2人の女子生徒と交際。青森の幼なじみとは一斉メールで連絡を取り続け、静岡では同僚と居酒屋に行き、秋葉原で遊んだ。「リア充」な生活の一方で、掲示板にのめり込んでいく心情は理解しがたい。重傷を負った女性被害者は「どうして被害に遭ったうえ、法廷であなたの理屈を理解しようとしなければならないのか」と、法廷でやり場のない怒りを述べた。 検察側は公判で、事件に至る経緯として▽容姿の劣等感▽就労が不安定▽交際相手がいないこと──に悩み、掲示板の成りすまし