<オオカミは保護すべき希少動物か、駆除すべき害獣か――人間たちの論争を尻目に、果てしなき旅を続ける1頭のオオカミの物語> オゥゥゥ、オゥゥゥ、オゥゥゥ〜! ジョン・スティーブンソンが口に手を当て、長く悲しげな遠ぼえをした。その叫びはローグ川・シスキュー国立森林公園の奥へと吸い込まれる。オゥゥゥ〜! スティーブンソンは米魚類・野生動植物局の職員で野生動物学者。呼び掛ける相手は識別番号OR-7、世界で最も有名なオオカミだ。17年5月のこと、スティーブンソンはオレゴン州南部の深い森にたたずみ、遠ぼえの返事を待った。だが、答えはない。 モミの巨木に設置した追跡カメラに残る1400枚以上の画像もチェックしたが、写っているのはクマやボブキャットやシカばかり。どうやらOR-7とその仲間たちは餌を求めて、山の反対側に行ってしまったらしい。彼の首に取り着けたGPS発信機は3年前から機能していないから、今は遠
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