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ブックマーク / hiko1985.hatenablog.com (8)

  • 道路交通看板「静かに」について - 青春ゾンビ

    夜が更けた帰り道、親の運転する車の窓から見上げる、「静かに」と書かれた青い看板が好きだった。お出掛けが終わってしまう“寂しさ”と、知っている場所に帰ってきた“安心感”がないまぜになったような感覚。幼心に芽生えたちょっとだけ複雑な感情が、あの看板に今でも宿っているような気がする。 そもそも、道路標識というものは、運転中にドライバーが目にするものだから、注意喚起するわりには情報量が少ない。じっくり読ませてしまったら事故を起こしてしまうから。「結局のところ、どういう意味なんだっけ?」と混乱することもあるが、効率や機能性を追い求めるこの情報社会において、あの“抜け感”がちょっと心地よいのだ。 個人的に「普通自転車等及び歩行者等専用」(得体の知れない物語性*1)とか「動物が飛び出すおそれあり」(シカ、タヌキ、サル、ウサギなどバリエーションがあるところかわいい)の標識あたりが好き。 そういった道路標識

    道路交通看板「静かに」について - 青春ゾンビ
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    honeybe 2023/07/26
  • 宮﨑駿『君たちはどう生きるか』 - 青春ゾンビ

    宮﨑駿による『不思議の国のアリス』(もしくは宮沢賢治の童話)とでもいうような、イマジネーションの破茶滅茶なまでの躍動。『千と千尋の神隠し』以降の作品に見られた傾向がさらに押し進み、ストーリー・テリングとしては、明らかに混乱している。しかし、それは宮﨑駿の“世界”に対する誠実な態度であるように思う。シンプルで明瞭なストーリーで語り切れるほど、この複雑で暗澹たる現代は生易しくないし、そもそも人間というのはそんなに簡単なものではない。たとえば、この映画における主人公の父親。彼にいい印象を持つ観客は多くないだろう。転校初日に車で学校に乗りつけたり、子どもの喧嘩に介入したりするさまなどは、まさにエーリッヒ・ケストナーが『飛ぶ教室』で書いた大人への批判がそのまま当てはまる。 どうしておとなはじぶんの子どものころをすっかり忘れてしまい、子どもたちにはときに悲しいことたみじなことだってあるということを、あ

    宮﨑駿『君たちはどう生きるか』 - 青春ゾンビ
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    honeybe 2023/07/17
  • さくらももこ『ちびまる子ちゃん わたしの好きなうた』 - 青春ゾンビ

    まる子が万歳している瞬間にも 宇宙全体のそれぞれの生命が平行して それぞれの世界をくり広げています 『ちびまる子ちゃん』では まる子の世界をクローズアップして描いていますが 平行して動いているあらゆる世界のことを 私は忘れないでいようと思います これは映画『ちびまる子ちゃん わたしの好きなうた』の原作として書き下ろされた漫画版のおまけに何気なく記されていた言葉。しかし、ここにさくらももこという作家の魂の根幹が示されているように思う。「平行して動いているあらゆる世界のことを私は忘れないでいようと思います」という宣言のとおり、フィルムは静岡県清水市の町並みを俯瞰で捉えるところから始まり、町の中に点在するモブキャラクターの何気ない仕草を切り取ったいくつかのショットが連なっていく。町で一瞬すれ違い、また別れていく人々。彼らの中にもそれぞれの人生の物語が、つまりは“うた”があり、それぞれのうたの響き

    さくらももこ『ちびまる子ちゃん わたしの好きなうた』 - 青春ゾンビ
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    honeybe 2022/07/06
  • 『かまいたちの知らんけど』濱家が涙…スーパー・イズミヤへ最後の挨拶 - 青春ゾンビ

    MBS製作『かまいたちの知らんけど』の9月12日放送の特別編「37年間通ったスーパー イズミヤへ濱家最後の挨拶」が実に素晴らしい内容だった。関西圏外にはあまり馴染みのない番組かもしれないが、今はTVerという素晴らしいメディアがありますのでぜひチェックして欲しい。 かまいたちの濱家の生まれ育った大阪市東淀川区にある上新庄という町で、彼が生まれる前から営業している大型総合スーパーイズミヤ。濱家にとって、幼少時代から家族や友人との思い出の詰まった大切な場所だ。そのイズミヤ上新庄店がこの8月末をもって47年間の歴史に幕を閉じるという。濱家はイズミヤに感謝と別れを伝えるべくロケを敢行する。 ショックすぎる…。 フードコートのチョコマーブルアイス、世界一美味いポテト。 おもちゃ売り場、ジャンケンのゲーム機、初めてCD買ったお店、横の屋さん。 たまに開催されるガラガラ福引き。 服もも全部イズミヤで

    『かまいたちの知らんけど』濱家が涙…スーパー・イズミヤへ最後の挨拶 - 青春ゾンビ
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    honeybe 2021/09/14
  • オードリー若林正恭の結婚に寄せて - 青春ゾンビ

    オードリー若林正恭が結婚。それはもう、かなり大袈裟に動揺してしまったのである。ナイーヴであることを唯一のアイデンティティとして、大人への一歩を踏み出せず、”青春ゾンビ”なんて造語と戯れながらダラダラと思春期を彷徨っている。そんな風にして自意識を拗らせたこの国のヤングアダルトの約7割が(当社調べ)、若林正恭の生き様に依存してしまっている。人からすれば迷惑な話である。しかし、彼の自意識のあり方、その変化を、自分の現在地と照らし合わせることで、これからの生き方の指針としていたのだ。であるから、社会人大学人見知り学部卒業見込みの私たちは、『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』『ナナメの夕暮れ』を読みながら、自意識のあり方を少しずつアップデートしてきたつもりだ。それでも、41歳の若林正恭が深夜の公園でバスケットボールに興じている姿に、「私たちはまだ大丈夫だ」とどこか安心していたところがある。

    オードリー若林正恭の結婚に寄せて - 青春ゾンビ
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    honeybe 2019/12/02
  • 小沢健二『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』 - 青春ゾンビ

    ① 小沢健二が、極めて私的ないくつかの関係性を綴ったリリック。ひどく露悪的ではあるが、どこまでも普遍的に、切実に響くことは否定できない。もしかしたら、ポップミュージックの歌詞というものは具体的であればあるほどいいのかもしれない、というような幻想に駆られる。それは言い過ぎとしても、「失恋して悲しい」と歌われるよりも、「君がいないと何にも できないわけじゃないとヤカンを火にかけたけど 紅茶のありかがわからない」(©️槇原敬之)なんてふうに歌われるほうが、その悲しみがずっと立体的になって心に響いてくる。それは「同じ体験をしたことがある」とかいう共感性ではなく、わたしたちが想像することができる生き物であるからだろう。歌詞の中で展開される限定的なシチュエーションと聞く人との距離、それを想像力で補うという運動性こそが、広く聞かれる大衆音楽というものを支える秘密なような気がしてならない。下北沢珉亭*1、

    小沢健二『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』 - 青春ゾンビ
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    honeybe 2018/02/21
  • 小沢健二とSEKAI NO OWARI『フクロウの声が聞こえる』 - 青春ゾンビ

    約20年の空白を経て、小沢健二が再び表舞台にその姿を現した。しかも、とびきりの新曲を携えて、だ。もう「懐メロ出稼ぎおじさん」といったような揶揄は通用しないだろう。ニューシングルはまさかのSEKAI NO OWARIとのコラボレーション。度肝を抜く発想と行動力でもって人々の関心を弄び、視線を釘付けにする。小沢健二のポップスターとしての強度は健在である。しかし、彼は何故、一度は真っ向から否定した音楽シーンに舞い戻ってきたのだろう。2017年4月23日にフジテレビ系で放送された『Love Music』の中で小沢健二とceroの間でこんな対話がなされている。 cero「なんでまたポップスをやりだしたんですか?」 小沢「ceroの3人みたいな人がいるので、当にそれが全てです」 これまであらゆる言葉でファンを欺き戸惑わせてきた小沢健二であるが、「当にそれが全てです」とまで言っているのだから、言葉を

    小沢健二とSEKAI NO OWARI『フクロウの声が聞こえる』 - 青春ゾンビ
    honeybe
    honeybe 2017/09/13
  • シャムキャッツ『君の町にも雨はふるのかい?』 - 青春ゾンビ

    夏にリリースされたシングル『マイガール』から短い間隔でのリリース、「曲が出来たので出しまーす」という感じ。練り込まれたアンセムが収録されているわけでもないし、サウンド的にもまとまりはない。音楽雑誌で6/10点をつられてしまうような、まさにバンドの過度期が刻印されたEPなのだけども、この若さに身をまさかせるでもなく、円熟するでもない、何がしたいんだかよくわらない音源が妙に愛おしい。同じく掴みどころのない小田島等によるジャケットワークもナイスだ。5曲入りというのがまたすごくいい塩梅で、その点で個人的にはボーナスでライブ音源が12曲も入っているのは蛇足に感じる。このとりとめのない5曲を気ままにリピートしていたいわけです。 今作は若くもなく、かと言って老いてもいないシャムキャッツというロックバンドの制作ドキュメントである。で、ここにはバンドのポジティブな風通しみたいなものが心地良く感じられる。そこ

    シャムキャッツ『君の町にも雨はふるのかい?』 - 青春ゾンビ
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    honeybe 2016/11/26
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