先月、8歳の息子がローマ国際映画祭に出席した。が、そんなもの親にとってはグラマラスもへったくれもない。 「あんたシャツがズボンから出とろうが。しっかり入れんね、だらしなか」と外野から博多弁で叫ぶばばあはになっていたのはわたしだが、菊地凛子主演のイタリア映画『Last Summer』のレッドカーペットは思いのほか静かだった。というか、日本の映画人が映画祭に出席するとき特有の大名行列が存在しなかった。はっきり言って、出演者以外に日本人は一人もいなかったと思う。 わたしが菊地凛子という女優を知るにあたり、まず驚いたのは、この人は一人でふらふらどこでも行くんだなあ。ということだった。日本の俳優にはマネージャーとかいろいろついて来るのがノームなんだろうが、彼女は本当に一人でやって来る。 そのせいだろうか。主演女優として艶やかに君臨し、いつも人々の輪の中心にいるわりには、彼女にはどこか、いつもぽつねん