要旨 岸田首相は、所得税などを定額で4万円減税し、非課税世帯には7万円程度を給付することで、総額5兆円規模の還元案などを検討しているとしている。 背景には、特に世界経済が40年ぶりのインフレに直面する中で、政府が税収を民間部門から徴収しすぎているという見方がある。政府部門は、コストプッシュとはいえ物価が上がっていることを背景に消費税収や所得税収が増えやすくなっており、結果として国民経済が苦しい割には税収が増えやすくなっている。円安が進展することで、短期的に家計の負担感が強まる一方で、グローバル企業の法人税収増加や物価上昇に伴う消費・所得税収の増加を通じて税収の過剰徴収につながりやすいこともある。 一般的に給付金や所得減税分の一部は貯蓄に回ることから、我が国では所得減税よりも消費減税の乗数の方が高い。事実、内閣府の短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)の乗数をもとに、所得減税と消費減税