死ぬ順番だけは守ろうと思うようになったのは、父のせいだ。あっけなく自分の手で死んでしまった父が母にたいへんな苦労をさせたのを見てしまったからではなく、むしろ、ギリギリの状態であったはずの父でも祖母が亡くなるのを見届けるまでは生きていたのを見てしまったからだ。ギリギリでもなんでもない僕は順番を守らなくてはならない。そう、強く思う。 じっさい生きていくことはハードコアで、父が逃げてしまいたくなってしまったのも、わからないでもない。たとえば、僕くらいの年齢(41)になると仕事では上と下から板挟みになって心を病み、プライベートでは親戚から「子供はつくらないの?」と心ないことを言われ傷つき、夜のコンビニでは若者のオヤジ狩りのターゲットになることに恐れ、老いた親の面倒を見なければならないだけではなく、そろそろ自分自身の老後のことを考えなければならなくなるなど、ほとんど無理ゲーのつらいことばかりだ。 さ