昨日と同じことを一生懸命頑張っていても飛躍はない HIP編集部(以下、HIP):家業である旭酒造を継ぐことになったときはどんな心境でしたか? 桜井博志(以下、桜井):「これは大変な会社を引き受けたな」と思いましたね(笑)。1984年に酒蔵を引き継いだんですけど、数字を見てみると売上が前年比85%だったんです。10年間さかのぼってみると、設備投資もしていなければ、社員の昇給もないまま、売上が3分の1ほどに縮んでしまっている。かろうじて赤字にせずに黒字を保っているような会社でした。 HIP:引き継いだ頃はお子さんも小さかったと聞きます。大変な状態ですね。 桜井:正直、怖かったですね。少しずつ、破滅の淵に近づいていく感覚でした。一方で、社員にはそこまで危機意識はなかったんです。社員に「何でこんな状況なんや?」と話を聞くと、売れない理由がいっぱい出てくる。でも彼らは、売れないこともダメな状況だとい