一票を投じる権利はあるのに、行使が難しい人たちがいる。施設に入る知的障害者や精神障害者だ。投票所に足を運ぶことが困難な人が少なくないにもかかわらず、施設内での不在者投票が原則として認められていない。投票所での介助者の代筆も許されず、投票しやすい環境が十分に整っているとは言えない。制度のはざまで、それぞれの一票がこぼれ落ちている。 (清水裕介、大野雄一郎、鈴木里奈) 愛知県津島市役所に設けられた期日前投票所。政党名や候補者名を記した紙が張られた投票記載台で、知的障害のある女性(54)の鉛筆を持つ手が止まった。「文字が読めないんだよね」。市選管の係員が「読み上げましょうか」と声をかけるとうなずいた。「ひらがなでもいい?」。ゆっくりと鉛筆を動かし、用紙を投票箱に入れた。