戦国時代の戦記物に人が求めるのはなんであろうか。有名な合戦の臨場感のある描写、キリキリと胃が痛くなってくるような一瞬の判断の描写、人間があっけなく死んでいく中での別れの切なさや当時独特の価値観、一つ一つの合戦を超えた自国の行末を思う気持ちなど、まあいろいろあるだろう。この『島津戦記』は、そういう意味からするとかなりズレた位置にある戦記物だ。戦場の描写なんてほとんどなく、個々人の気持ちにフォーカスして、後半になるほどドラマが盛り上がるように構成されていくわけではない。ひどくあっさりとした作品ではある。しかし読んでみればわかるが、そこには歴史の大きな変動を切り取った興奮と、否が応でも振り回されていく個人と、それでも成すべきことを成そうと舵をとる奮闘がある。 この『島津戦記』は何を書いているのかといえば、シンプルに表現すれば「世界史の中での日本戦国記(島津記)」とでもいうべきだろうか。どういうこ
![島津戦記 by 新城カズマ - 基本読書](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/76c54cd9e8b789caa1fc87abbde633de682bb43d/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fecx.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51smZOGbfHL.jpg)