コロナウイルスが世界を席巻するなかで、この災禍が国家や社会のあり方にどのような影響を与えているのかについて、色々な意見が出されている。多くの論者は、このコロナ禍によってグローバリズムの理念が大きく後退し、かわりに国民国家が再浮上したと指摘している(たとえば、Gideon Rachman, “Nationalism is a side effect of coronavirus”, Financial Times電子版、3月23日付け;ギデオン・ラックマン「大流行の危ない副作用」、『日本経済新聞』3月30日付け)。たしかにヨーロッパでは、コロナ対策におけるEUの役割はよく見えず、個々の国家が前面に出ている。それ以外の地域でも、国家が対策の中心にいることは間違いない。 だが、私は、国民国家の再浮上と留保なしにいうことにはためらいがある。まず、より適切な用語はないのだろうか。イスラエルの一論者は