インドネシアの首都ジャカルタで、「雇用創出法案」可決に反対する市民のデモが激しくなっている。写真は、現場の警備に投入された陸軍の兵士(写真:ロイター/アフロ) (PanAsiaNews:大塚 智彦) 東南アジア諸国連合(ASEAN)の大国で、世界第4位となる人口約2億7000万人を抱えるインドネシアが深刻な危機に瀕している。ASEAN域内最悪の感染者数、感染死者を記録し続けている新型コロナウイルスによる医療崩壊や、感染拡大防止のための社会活動の制限に起因する大量の失業者と生活困窮者の発生と経済活動の停滞も大きな危機だ。しかし、より深刻なのは、インドネシア人のアイデンティティーにも関連する「市民の権利と自由の危機」だ。 インドネシアでは1998年、前年からの東南アジア通貨危機の余波と地方から首都へと波及した学生や労働者などによる民主化要求デモにより、32年間続いたスハルト長期独裁政権が崩壊し