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ブックマーク / hiko1985.hatenablog.com (36)

  • 宮﨑駿『君たちはどう生きるか』 - 青春ゾンビ

    宮﨑駿による『不思議の国のアリス』(もしくは宮沢賢治の童話)とでもいうような、イマジネーションの破茶滅茶なまでの躍動。『千と千尋の神隠し』以降の作品に見られた傾向がさらに押し進み、ストーリー・テリングとしては、明らかに混乱している。しかし、それは宮﨑駿の“世界”に対する誠実な態度であるように思う。シンプルで明瞭なストーリーで語り切れるほど、この複雑で暗澹たる現代は生易しくないし、そもそも人間というのはそんなに簡単なものではない。たとえば、この映画における主人公の父親。彼にいい印象を持つ観客は多くないだろう。転校初日に車で学校に乗りつけたり、子どもの喧嘩に介入したりするさまなどは、まさにエーリッヒ・ケストナーが『飛ぶ教室』で書いた大人への批判がそのまま当てはまる。 どうしておとなはじぶんの子どものころをすっかり忘れてしまい、子どもたちにはときに悲しいことたみじなことだってあるということを、あ

    宮﨑駿『君たちはどう生きるか』 - 青春ゾンビ
  • 『劇場版まーごめドキュメンタリーまーごめ180キロ』 - 青春ゾンビ

    『劇場版まーごめドキュメンタリーまーごめ180キロ』は傑作だ。不条理を支える研ぎ澄まされた言語センス、そして引用の多様さ的確さに、お笑いが新しい世代に突入していることを痛感させられる。2022/2/20(日)まで配信が延長されているとのことなので、ぜひとも視聴をオススメいたします。ここには間違いなく1500円以上の価値があるのです。 ここでは、“お笑い”であることを一旦無視して、ネタバレ全開で『劇場版まーごめドキュメンタリーまーごめ180キロ』を語ってみたい。原宿の喧騒の中に構えるワタナベエンターテイメント社前、大きな身体で所在なさげに佇む大鶴肥満から映画は始まる。大鶴肥満はワタナベの所属タレントであるマルシアの出待ちをしている。なんでも、彼はマルシアに“謝りたい”のだという。ここで、大鶴肥満の存在を知らない方のために記しておくと、大鶴肥満というのはママタルトというコンビのお笑い芸人であ

    『劇場版まーごめドキュメンタリーまーごめ180キロ』 - 青春ゾンビ
  • 『かまいたちの知らんけど』濱家が涙…スーパー・イズミヤへ最後の挨拶 - 青春ゾンビ

    MBS製作『かまいたちの知らんけど』の9月12日放送の特別編「37年間通ったスーパー イズミヤへ濱家最後の挨拶」が実に素晴らしい内容だった。関西圏外にはあまり馴染みのない番組かもしれないが、今はTVerという素晴らしいメディアがありますのでぜひチェックして欲しい。 かまいたちの濱家の生まれ育った大阪市東淀川区にある上新庄という町で、彼が生まれる前から営業している大型総合スーパーイズミヤ。濱家にとって、幼少時代から家族や友人との思い出の詰まった大切な場所だ。そのイズミヤ上新庄店がこの8月末をもって47年間の歴史に幕を閉じるという。濱家はイズミヤに感謝と別れを伝えるべくロケを敢行する。 ショックすぎる…。 フードコートのチョコマーブルアイス、世界一美味いポテト。 おもちゃ売り場、ジャンケンのゲーム機、初めてCD買ったお店、横の屋さん。 たまに開催されるガラガラ福引き。 服もも全部イズミヤで

    『かまいたちの知らんけど』濱家が涙…スーパー・イズミヤへ最後の挨拶 - 青春ゾンビ
  • 坂元裕二『大豆田とわ子と三人の元夫』1話 - 青春ゾンビ

    <A面> オレンジ色の上下のジャージを身に纏った大豆田とわ子(松たか子)が、オレンジ色の布で囲われた公園を歩いている。このはじまりが象徴的なのだけど、この『大豆田とわ子と三人の元夫』というドラマにはあまりにも“オレンジ”に満ちているのだ。大豆田とわ子が入店するお洒落なパン屋の軒先、大豆田とわ子の住む部屋のカーテンとソファーと照明、大豆田とわ子が拾うパスタ、大豆田とわ子が出席した従兄弟の結婚式会場の照明、大豆田とわ子の娘が飲むオレンジジュース、大豆田とわ子の3番目の夫の髪色、2番目の夫の着るアウターの切り返し、1番目の夫の名前の響き(ハッサク*1)、大豆田とわ子の履くサンダル、大豆田とわ子の持つバッグ、大豆田とわ子の同僚の洋服、シロクマハウジングのオフィスの証明、ミニチュアの家の屋根、大豆田とわ子のiPhoneの背景トーン、大豆田とわ子が焦がれるカレーパン、大豆田とわ子の履く、大豆田とわ子

    坂元裕二『大豆田とわ子と三人の元夫』1話 - 青春ゾンビ
  • 坂元裕二『花束みたいな恋をした』 - 青春ゾンビ

    <A面> 絹(有村架純)が「この人はわたしに話しかけてくれている」と心酔するブログ『恋愛生存率』ではいつも同じテーマが綴られていた。それは、”はじまりはおわりのはじまり“。 出会いは常に別れを内在し、恋愛はパーティーのようにいつしか終わる。だから恋する者たちは好きなものを持ち寄ってテーブルを挟み、お喋りをし、その切なさを楽しむしかないのだ ある日、ブログの筆者である”めい“は恋に落ち、「数パーセントに満たない生存率の恋愛をわたしは生き残る」と綴ったその一年後に自ら命を絶ってしまう。 めいさんが死んだ 恋の死を見たんだろうか。その死に殉ずることにしたんだろうか。どれも想像に過ぎないし、そこに自分の恋愛を重ねるつもりはない としながらも、絹の頭には「どんな恋でも、いつしか必ず終わりを迎える」という諦念が刷り込まれている。麦(菅田将暉)が何気なく言ってのける「僕の人生の目標は絹ちゃんとの現状維持

    坂元裕二『花束みたいな恋をした』 - 青春ゾンビ
  • 坂元裕二『スイッチ』 - 青春ゾンビ

    だんだん不思議な夜が来て あたしは夢の中へ 堕ちていく天使は 炎を見出してく JUDY AND MARY「LOVER SOUL」 JUDY AND MARYの楽曲の挿話が『最高の離婚』(2013)を彷彿させる・・・などと列挙していたら限がないほどに、これぞまさに坂元裕二の集大成といった質感のドラマであった。社会から零れて堕ちていく人々を天使として描いてきた坂元裕二のドラマを象徴するように、ドラマは高層マンションの吹き抜けを上空から下降していくショットで始まり、天使であるところの主人公のひどく拗らせたナレーションから物語を進行させていく。そして、リーガルサスペンスとしながら、冒頭で真の犯人は星野七美(石橋静河)であると明らかにされ、ドラマのジャンル、そして善/悪の倫理感が混濁していく。善/悪のスイッチのシームレスな切り替えこそが、人間なのだ。『カルテット』(2017)ではそれを、「白黒つけら

    坂元裕二『スイッチ』 - 青春ゾンビ
  • 新海誠『天気の子』 - 青春ゾンビ

    降り続ける雨を、流れる“涙”の比喩としよう。この街では、誰かがいつも泣いているからだ。映画のキーヴィジュアルに選ばれたのは代々木会館だった。『傷だらけの天使』(1974)でお馴染みの通称“エンジェルビル“*1。つまり、これは現代社会から爪弾きにされた天使たち(≒若者たち)の、その涙の物語なのだ。この映画で多発されるイリーガルな行為の数々は、あらゆることが許されていた『傷だらけの天使』などの犯罪青春ドラマへの憧れなのだろう。「美しさと倫理は両立しない」というのが、『君の名は。』(2016)から続く新海誠が創作において取り組む、隠れたテーマであるように思う。『君の名は。』は、一つの街を消し去り、多くの命を奪った隕石が落下していく様子を、「美しい眺めだった」と思ってしまう少年の話だった。この『天気の子』においても、警官への暴力をカタルシスとして配置し、水に沈む都市をフェティッシュに描いてしまう。

    新海誠『天気の子』 - 青春ゾンビ
  • 最近のこと(2019/04/01〜) - 青春ゾンビ

    10連休ですね。もちろんうれしいのだけども、この"変わっていってしまう"感覚に精神が疲弊してしまっている。Robag WruhmeというドイツのテクノDJの「Venq Tolep」という曲の美しさに心を慰められています。平成から令和のまたぎのお祭り騒ぎにも、なんだかすごく寂しくなってしまった(SMAPもいないし)。令和になる瞬間は、テレビで爆笑問題の太田光の「れいわー」という叫び声を聞いた。実にバカバカしくて、どうでもいい感傷を無化してくれました。どうせなら平成について振り返ろうと思ったけども、膨大過ぎるというか、それはもうほとんど「わたしのすべて」であるということに気づいた。それでもノスタルジックな気持ちで、ポップカルチャー原体験を掘り返してみると、バーコードバトラーⅡとミニ四駆について辿り着いた。 平成のポップカルチャー個人史を振り返った時、『バーコードバドラーⅡ』が最初にある。機械に

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  • プロフェッショナル仕事の流儀「 生きづらい、あなたへ~脚本家・坂元裕二~」 - 青春ゾンビ

    「私 この人のこと好き 目キラキラ」みたいなのは そこには当はない気がするんですよね バスの帰りで雑談をして バスの車中で「今日は風が強いね」とか 「前のおじさん寝ているね」「うとうとしているね」とか そんな話をしながら 「じゃあね」って帰って行って 家に着いて 一人でテレビでも見ようかなって思ったけどテレビを消して こうやって紙を折りたたんでいるときに 「ああ 私 あの人のこと好きなのかもな」って気が付くのであって 小さい積み重ねで 人間っていうのは描かれるものだから 僕にとっては大きな物語よりも 小さい仕草で描かれている人物をテレビで見るほうが とても刺激的だなって思うんですよ 番組で発されたこの言葉に、坂元裕二の書くテレビドラマの魅力が端的に言いまとめられている。何の意味も、何の価値もないように見えることに、“当のこと”は詰まっている。それを教えてくれるのが坂元作品だ。このドキュ

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  • 今井一暁『ドラえもん のび太の宝島』 - 青春ゾンビ

    川村元気という海賊による略奪。奪われたのは、藤子・F・不二雄『ドラえもん』、ロバート・ルイス・スティーヴンソン『宝島』という児童文学が誇る偉大なフォーマットだ。今作のベースにスティーヴンソンの『宝島』が置かれる必然性がまったく理解できなかった。 映画ドラえもん のび太の南海大冒険 [DVD] 出版社/メーカー: 小学館発売日: 2005/04/20メディア: DVD クリック: 4回この商品を含むブログ (12件) を見る『ドラえもん のび太の南海大冒険』(1998)は、のび太が『宝島』を夢中になって読み、宝探しに強い憧れを持つところから始まる。しかし、今作は出木杉への対抗心から、宝探しを始めようとするわけで、なんというかピントがズレている。果てには、地球エネルギーという大きなSFに飛躍し、『宝島』のマインドは希薄になっていく。また、親子の絆の描写に大きく時間を割いたゆえ、キャプテンシルバ

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  • 『あいのり:Asian Journey』の異様な魅力について - 青春ゾンビ

    『あいのり:Asian Journey』がおもしろい、呆れるほどにおもしろい。ここ数日でい入るようにして、Netflixで配信済の約20のエピソードを観終えてしまった。必要ないとは思いますが、『あいのり』という番組について念のため説明しておきます。「ラブワゴン」と呼ばれるピンクにカラーリングされた車に乗った男女7人が、様々な国を旅する。その中で繰り広げられる恋模様を見つめていく恋愛観察バラエティ。スタジオのタレントや視聴者は、そこで繰り広げられる出来事のすべてを俯瞰することができ、更にはメンバーの心情や過去のトラウマすら把握できてしまう。すべてのことが手にとるようにわかる。これはまさに神である。しかし、ラブワゴンのメンバーたちは、そんな神々の思考をいとも簡単に飛び越えてくる。突拍子もつかないような行動に打って出ては、わたしたちを驚かせるのだ。まさに筋書きのないドラマ。その行動に対して、「

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    hyaknihyak
    hyaknihyak 2018/03/07
    流し見してたけど、シャイボーイが出てきてから俄然面白くなってきた感じある
  • 坂元裕二『anone』2話 - 青春ゾンビ

    <社会の理からはみ出す> 1話のエントリーで孤児とも天使とも形容した今作の登場人物たちは、つまりは社会というシステムからの追放者である。ネグレクトされ”家なき子”としてネットカフェで寝泊まりする辻沢ハリカ(広瀬すず)。フランチャイズチェーンに加盟した結果、父から受け継いだ土地を企業に奪われてしまう持舵(阿部サダヲ)。丸の内の商社に努めるキャリアウーマンであったが、男性社会において出世街道を外された青羽るい子(小林聡美)。そして、血の繋がりを理由に家族という共同体を除外された林田亜乃音(田中裕子)。誰もが社会から居場所を奪われ、傷ついている。スーパーの3割引されたパックの総菜を、椅子に座ることもなく立ったまま発泡酒で胃に流し込む亜乃音の姿は、花房(火野正平)が言うところの、”人様の秘めた哀しみ”というのを体現している。だが同時に、そういった社会性から逸脱したふるまいの放つ生々しさが、妙に胸

    坂元裕二『anone』2話 - 青春ゾンビ
  • 坂元裕二『anone』1話 - 青春ゾンビ

    坂元裕二の新作ドラマ『anone』の放送がついに開始された。ジャンルレスゆえに、現段階ではまだまだ漠然とした印象だが、イメージを織り重ね、ストーリーを形作っていくその筆致はやはり郡を抜いている。1話における白眉は、偽札を巡る歪なカーチェイスで3つの群像劇が交差していくスペクタクルだろうか。その果てに、「が脱げてしまう」という情けないアクションで人物たちがひっそり結びついてしまうという描き方には、「坂元作品を観ている」という興奮を覚えた。序盤で「名言っていい加減ですもんね」と自虐的に言及しているにも関わらず、やっぱり坂元裕二のドラマは名言でまとめられてしまう。坂元裕二の名言砲、坂元裕二ドラマは名言の癖がすごい・・・気持ちはわからないでもない。「お金じゃ買えないものもあるけど、お金があったら辛いことは減らせるの」も「大丈夫は2回言ったら大丈夫じゃない」も確かに良いのだけども、やはりその真骨頂

    坂元裕二『anone』1話 - 青春ゾンビ
  • 長濱ねる1st写真集『ここから』 - 青春ゾンビ

    <Aパート> 1日あればいいの 人生には 1日あれば 大事な大事な1日があれば これは、坂元裕二が脚を手掛けたテレビドラマ『Mother』(2010)において、田中裕子が発した台詞。長濱ねる(欅坂46)の1st写真集『ここから』があまりに眩くて、切なくて、胸が痛くなるので、思わず引用してしまった。つまり、「君みたいに素敵な女の子とこんな1日を過ごせたら、人生それでもう充分だよな」ということだ。この写真集は、長濱ねるとの疑似旅行体験に誘い、命を焦がすような一瞬の数々を披露してくれる。海岸で美しい夕陽を祈るように見つめる長濱ねるが側にいたら、「生きるということ」の意味がバチコーンと理解できてしまうのではないか。物議を醸している、やや過剰な性的表現もまったく問題なし。あの瑞々しい身体の前で何の文句が言えよう。谷川俊太郎が綴ったように、「生きるということ それはミニスカート すべての美しいものに

    長濱ねる1st写真集『ここから』 - 青春ゾンビ
  • ラジオ「ハライチ岩井 フリートーク集」の凄味 - 青春ゾンビ

    突然ですが、2017年にリリースされた音源のベスト1が決定いたしました。「ハライチ岩井 フリートーク集」である。「ハライチのラジオがおもしろい」というのは何度も目にする文言でしたが、すでに放送が開始されているラジオ番組を新規で聞き始めるというのは、かなりのリテラシーが求められる。ラジオ番組の特有のグルーヴというか、ルールのようなものを飲みこまねばならないからだ。その点において、この「ハライチ岩井 フリートーク集」は、まさに導入にうってつけなのである。番組内の岩井フリートークのみが編集され、トークをトラックで区切りタイトルで管理、更にはトップ画にタイムスケジュールまで記載してくれている。まるで1枚のアルバムを聞くようにして楽しめる。 1曲目の「電車」を試聴さえすれば、それ以降のトラックに耳をふさぐのは難しいだろう。岩井の淀みのない流暢な喋りとその声質の良さ、巧みな情景描写とオチに向けての緻密

    ラジオ「ハライチ岩井 フリートーク集」の凄味 - 青春ゾンビ
    hyaknihyak
    hyaknihyak 2017/10/30
    ハライチ岩井、おはスタでファンになった、めっちゃ好き
  • 最近のこと(2017/09/27~) - 青春ゾンビ

    youtu.be SaToAの新曲「Light」のMVである。天才だ...メロディも歌唱もパーフェクトだけど、演奏の音色とフィーリングが最高×100。さて、10月になってしまった。ありきたりなことをペラペラと並び立てると、何をするにもちょうどいい素敵な季節が訪れた一方で、今年もあと3ヶ月だとかと焦ります。しかし、当に時の流れが早い。『カルテット』観てたのなんて、ついこの間な気がするのだけど、あれは年初の出来事らしい。珍しくこの「最近のこと」を書き漏らさず、更新できそうである。月末・月初はブログ更新へのモチベーションが高い傾向にある気がする。 水曜日。帰りにスーパーでハムと卵を買って、丁寧にハムエッグを作ったら、丁寧な分しっかり美味しかった。思い切って卵を3個も使ってやった。「卵はコレステロールが多いので、1日1個まで」という古からの教えはもう定説ではないようだ。板東英二と眞鍋かをりの人体

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  • 小沢健二とSEKAI NO OWARI『フクロウの声が聞こえる』 - 青春ゾンビ

    約20年の空白を経て、小沢健二が再び表舞台にその姿を現した。しかも、とびきりの新曲を携えて、だ。もう「懐メロ出稼ぎおじさん」といったような揶揄は通用しないだろう。ニューシングルはまさかのSEKAI NO OWARIとのコラボレーション。度肝を抜く発想と行動力でもって人々の関心を弄び、視線を釘付けにする。小沢健二のポップスターとしての強度は健在である。しかし、彼は何故、一度は真っ向から否定した音楽シーンに舞い戻ってきたのだろう。2017年4月23日にフジテレビ系で放送された『Love Music』の中で小沢健二とceroの間でこんな対話がなされている。 cero「なんでまたポップスをやりだしたんですか?」 小沢「ceroの3人みたいな人がいるので、当にそれが全てです」 これまであらゆる言葉でファンを欺き戸惑わせてきた小沢健二であるが、「当にそれが全てです」とまで言っているのだから、言葉を

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  • 若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』 - 青春ゾンビ

    星野源とオードリー若林正恭。この国の”生き辛さ”を抱える人々のか細き声を代弁してきたメディアスターだ。”人見知り”という自虐を武器に成り上がってきた2人だが、年齢を重ね、活躍のステージを上げていくにつれ、奇しくも共に”人見知り”を克服した旨の宣言をする。しかし、その語り口は大きく異なる。星野源の"それ"について語り出すと止まらなくなってしまうので、ここでは若林正恭の脱・人見知り宣言にフォーカスしてみよう。様々な場所でおもしろおかしく語っているのだが、比較的音が聞けるであろうラジオでは、以下のような意味合いのことを語っていた。 人見知りは若い子たちのもの 年齢を重ねた自分は、飲み会などで居心地の悪そうな若い子たちに、 気を遣っていかなくてはならない立場になった この語りからもわかるように若林正恭の抱える”生き辛さ”の視線は、個人を超え、広く社会に向けられ始める。若林は40歳を目前にして、ニ

    若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』 - 青春ゾンビ
  • 坂元裕二×是枝裕和トークショー『ドラマの神様は細部に宿る』 - 青春ゾンビ

    坂元裕二と是枝裕和、この字面の並び!!何度だって反芻したい。坂元裕二×是枝裕和トークショー『ドラマの神様は細部に宿る』に参加してきたのだ。”テレビドラマ”を語るにおいて、この上ない組み合わせを実現させた早稲田大学演劇博物館に溢れんばかりの感謝を。当初は300人収容の会場での開催予定だったのだが、予約が殺到し、急遽1000人収容の大隈記念講堂に会場を変更したわけですが、それでも収まりきらない需要。当日は中継映像を流す会場まで設置されていた。泣く泣く予約を諦めたという方もたくさんいらっしゃると思いますので、この日、会場を包んでいた穏やかながらも確かな興奮を伴なった”熱”のようなものを少しでもレポートできたらと。 トークショーは互いの作品の好きなシーンをスクリーンで流し、気になるポイントを質問するというシンプルなスタイルで進行した。クリエイター同士の質疑は非常に示唆に富み、刺激的でありました。ま

    坂元裕二×是枝裕和トークショー『ドラマの神様は細部に宿る』 - 青春ゾンビ
  • ジェームズ・ガン『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』 - 青春ゾンビ

    もう当に大好き!! 前作は人が死にまくるわりに、やたらとウエットなのがやや気になるところでしたが、このvol.2に関してはもはやそこがいいというか、素直に泣かされてしまった。映画(に限らず漫画やアニメも)のヒーロー/ヒロインで両親が健在なケースというのは非常に稀で、ヒーローたちはすべからく”孤児”だ。仮に健在であるならば、倒す宿命にある。今作のヴィランは、クイルの実の父であるエゴであり、シリーズを通してのラスボスと思われるサノスはガモーラとネビュラの(義理の)父。スペースオペラ親子喧嘩である。その元祖と言えば『スター・ウォーズ』シリーズなわけで、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』も当然その流れを汲んでいるわけですが、このままシリーズがずっと続いていったら、20年後の子どもたちにとっては、その地位が逆転している可能性すらあるのではないだろうか。まさに親殺し!と、怒られそうなことを書いて

    ジェームズ・ガン『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』 - 青春ゾンビ
    hyaknihyak
    hyaknihyak 2017/05/25
    “『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は宇宙版『カルテット』である”