「泡で汚れは落とせない」「泡は洗浄剤の演出でしかない」 界面活性剤の世界ではこれが長年の常識だった。 この常識が覆されたのは、わずか2年前のことだった──。 「泡で洗う」ことは、私たちの日常にすっかり定着している。だが、一昔前を思い返せば、それが決して当たり前ではなかったことに気づく。洗浄に付随する“泡”そのものに価値を見出していた人がどれほどいただろうか。 だが今では「フワフワな泡」「クリーミーな泡」「長持ちする泡」と形容詞が並ぶほど、泡にはバリエーションがある。その裏には、洗剤、洗顔料、シャンプー、ボディソープなど、さまざまな用途に合わせて泡をデザインし、形にしてきた研究員の奮闘があった。 そして理想の泡を追い求めた研究員の挑戦が、ついには科学の常識を塗り替える新事実を見出していたのだ。 約30年にわたり界面化学の研究をリードしてきた花王主席研究員の坂井隆也氏。 インタビューで開口一番