読みながら、ずっともどかしい気分に囚われていました。ときにそれは軽い「吐き気」を催すような居心地の悪さでもありました。尹雄大氏の『さよなら、男社会』の読書感です。もどかしい気分になるのは、自分の中ににも確実にある「男性性」の正体がなかなかつかめない、つかめそうでつかめないからで、吐き気を催したのはそんな男性性がもたらす「ホモソーシャル」なあり方と自分のこれまでに体験してきた様々な「いやなこと」(それはまさしくホモソーシャルな環境がもたらしたものでした)が次々に身体の中に蘇ってきたからです。 さよなら、男社会 ご本人の家庭環境や生い立ちに深く降りて行きながら、そこで育まれた男性性について分析しているので、正直に申し上げてそれほど読みやすい本ではありません。男性性、それも私たちにとって明らかに有害な男性性について考えるのであれば、太田啓子氏の『これからの男の子たちへ』のほうがずっと読みやすい。