「能」はおよそ650年前の室町時代、観阿弥・世阿弥父子によって大成された芸能だ。現在に至るまで、一度の断絶もなく上演され続け、世界無形文化遺産にも認定されている。 なぜこれほど長期に渡って受け継がれてきたのか。能楽師の安田登さんは、能はある意味「長寿企業」であり、これだけ長く続いてきたのには能独自の考え方があるからだという。 能はこれまでどんな伝統を引き継ぎ、そしてどんな変化を取り入れてきたのだろう? 能の世界で培われた組織づくりの考え方をヒントに、これからの企業のあり方を考えてみた。 天才に依存せず、誰でもできる仕組みを組織に取り入れる ――能は650年も続く、ある意味ミレニアム企業であると安田さんは主張されています。これだけ長期に渡って続いた理由は何だったと分析しますか? 一つには「天才に依存しない」ことが挙げられます。天才に依存してしまうと、その天才がいなくなった途端、組織が成り立た