生協が母たちに届けた原発事故 被曝を恐れて首都圏から自主避難した母親がいる。彼女らが抱えていた不安は、妄想によって生まれた感情ではなく、日常的に接していた情報から芽生えた確信だった。 この時期に、少なからぬ数の生活協同組合(生協)が会員のほとんどを占める女性たちに伝えた情報は、他の食料品店が伝えたものとも、政府や自治体が伝えたものとも大いに違っていた。 「食べて応援」を否定し批判したのも、母親たちが信頼を寄せていた生協だった。生協は未だにALPS処理水を「汚染水」と呼んで放出を阻止しようとしている。 母たちが見ていた原発事故 第一回で紹介したAは、被曝を恐れて小学生の子供とともに首都圏から近畿地方へ自主避難した。科学的な評価だけでなく当時の一般的な感覚をもってしても、理解し難い不要な避難だった。筆者や協力者が彼女とやりとりをすると、原発事故の被害規模や、世情に対しての認識が常に大きく食いち