ブックマーク / note.com/d_yosoji_man (7)

  • 毒親ブームと「宗教2世」問題|ダッヂ丼平

    はじめに20世紀のイギリスを代表する宗教社会学者ブライアン・ウィルソンは、1997年に来日した際、東洋哲学研究所が開催したセミナーで世界中の新宗教が共通して直面する課題について講演した。この講演の中で列挙された問題の大半は、新宗教が社会から受けるさまざまな攻撃と関連している。いうなればこの講演録は、一般社会の敵意と偏見が引き金となって新宗教に降りかかる困難を詳細にリストアップしたものだ[ウィルソン1998]。 このリストに挙げられているものの中で、特筆すべきなのはマスメディアの報道が引き起こす害悪と、背教者たちの語る残虐な話の2つである。背教者というのは新宗教研究における学術用語であり、かつて所属していた教団に敵対し、批判を熱心におこなう元信者を指して用いられる。 そして残虐な話とは、過去に所属していた教団がいかに酷い団体であるかを社会に訴える目的に特化した、虚偽の内容も含まれるようなバイ

    毒親ブームと「宗教2世」問題|ダッヂ丼平
  • 自認か、糾弾か〜アダルトチルドレン論と毒親論の距離〜|ダッヂ丼平

    はじめに20世紀が終わりを迎えようとしていた頃の日で、アダルトチルドレンブームなるものがあったことを覚えている人もいるだろう。ジャーナリストの西山明が書いた『アダルト・チルドレン』というルポが1995年に出版されたのを皮切りに、続々とアダルトチルドレンという言葉を冠したが刊行され、いくつかはベストセラーとなり、話題を集めていた。 アダルトチルドレン(以下、AC)とは、機能不全家族で育ったために成人しても様々な精神的な困難を抱え、生きづらさに悩む大人のことを指す。折しも、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件といった悲惨な出来事が続き、「心のケア」への関心が高まっていた。そんな時代の空気に後押しされ社会現象となったACだが、ブームと裏腹のバッシングも同時並行して存在していた。 ■AC概念への批判ピンからキリまで存在した批判的言説の最良のものの一つとして、文芸評論家の斎藤美奈子による時評が挙げら

    自認か、糾弾か〜アダルトチルドレン論と毒親論の距離〜|ダッヂ丼平
  • 【続報】カルシウム不足=イライラ説の起源についての継続調査|ダッヂ丼平

    皆さん、カルシウムとってますか。私は乾きものはアーモンドカルをよくべます。 さて、以前私はカルシウム不足がイライラの原因となるという俗説の起源についてリサーチし、2つのnoteに分割して調査の報告をしました。「イライラの原因はカルシウム不足という説の起源」という記事と「川島四郎とフードファディズム」という記事がそうです。 前編にあたる「イライラ説の起源」の記事では、まずTBSテレビで2018年9月25日に放送された『この差って何ですか』という番組で紹介された説を紹介し、それを乗り越えるべき従来の説とすることで自論の展開をしました。少し具体的にいうと、TBSテレビはある雑誌に掲載された「ストレス社会の原因はカルシウム不足」という1975年の記事がイライラ説の起源だとしましたが、私はそれよりも古い1972年の毎日新聞に掲載された記事が起源と主張したと、このような対立図式です。 TBSテレビ

    【続報】カルシウム不足=イライラ説の起源についての継続調査|ダッヂ丼平
  • 「他者の不合理性」を語ることの無意味さ〜櫻井義秀氏の論考に寄せて〜|ダッヂ丼平

    はじめに『月刊住職』という雑誌がある。「宗派を超えた寺院住職実務情報誌」という、いわば仏の道のプロ向けの月刊誌である。仏教界の話題に限定せず、ひろく宗教に関係した記事も掲載するこの雑誌に、北海道大学大学院の櫻井義秀教授は「現代日の宗教最前線」というタイトルの連載を持っている。連載7回目となる2023年4月号では「キリスト教信者が増えぬ日でなぜ新宗教が教勢拡大できたか」と題し、旧統一教会とエホバの証人という2つのキリスト教系新宗教の布教戦略を比較して論じた。 筆者は母親がエホバの証人の信者であった家庭で育ち、高校生までその宗教コミュニティに参加していた経験から、この教団の教勢拡大(信者数の増加)の歴史について、1970年代から90年代にかけて子育て中の母親たちに聖書が子どものしつけに役立つとする勧誘文句が効果的に入信をうながし、教勢が拡大していったのだと解説するnoteを書いたことがある

    「他者の不合理性」を語ることの無意味さ〜櫻井義秀氏の論考に寄せて〜|ダッヂ丼平
  • ジェンダーと「宗教2世問題」〜エホバの証人の例を中心に〜|ダッヂ丼平

    2022年11月24日の朝日新聞に掲載された「新興宗教と女性」と題した時評で、東京大学大学院の林香里教授はこの年の夏から注目されだした「宗教2世問題」にジェンダーの視点をとりいれて論じた。宗教2世をテーマにした菊池真理子さんのマンガを読んだ林さんは、まず次のようなことに気づく。 「それは、ほとんどの場合、母親が信仰を主導し、子どもたちに強引に活動に参加させていることだ。父親はいないか、見て見ぬふりをするか、アルコール依存症の者もいた。」 そしてこう続ける。「統計的な把握は難しいが、菊池の描く漫画を通して、一部のいわゆる新興宗教団体は、日の女性たちの生きづらさの受け皿になりながら、彼女たちを巧妙に利用していると感じる。」 このあとは論壇時評として数冊のの内容を紹介しつつ論がすすめられるが、その内容をまとめると次のようになる。いわく、日社会にはいまだ構造的なジェンダー不平等が存在しており

    ジェンダーと「宗教2世問題」〜エホバの証人の例を中心に〜|ダッヂ丼平
  • イライラの原因はカルシウム不足という説の起源|ダッヂ丼平

    この記事をお読みになっているあなたが日で生まれ育った方ならば、人生で一度は「なにイライラしてんだよ、カルシウム足りてねぇんじゃねえの?」に類する台詞を目にしたことがあるのではないでしょうか。私が最初にイライラとカルシウム不足を結びつける説を知ったのはこの記事の見出し画像にもしているこち亀の81巻105〜123頁に収録されている797話「怒りの心にカルシウム!?の巻」でした。この回のお話は自分の怒りっぽさを反省した両さんがカルシウムをたくさん摂取して怒らないように気をつけるけれどもお祭りの会場で酔っ払いに絡まれて堪忍袋の尾が切れて全てが台無しになる、というもので週刊少年ジャンプ誌には1992年40号に掲載されました。すでに1992年にはギャグマンガのネタにできるほどこの説が浸透していたことがうかがえます。 秋治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』81巻、集英社、1993年、116頁秋治『

    イライラの原因はカルシウム不足という説の起源|ダッヂ丼平
  • 川島四郎とフードファディズム|ダッヂ丼平

    前回の記事では川島四郎かわしましろうという日陸軍で軍用糧の研究をしていた職業軍人の栄養学者が、戦後の1971年前後に小谷正一こたにまさかずという当時マスコミに太いパイプを持っていた人物との偶然の出会いによって新聞やテレビなどで発言する機会を得て、その時にしゃべった根拠の曖昧な主張が日人にカルシウム不足がイライラの原因になるという迷信を植え付けたのだ、という経緯をご説明しました。まだ下のリンク先の記事を読んでいない方は是非ご一読をいただければ幸いです。 1972年以後の川島四郎の活躍1972年の毎日新聞の全12回のインタビュー記事を皮切りに川島四郎は栄養学の権威として人気を博していきます。真っ先に考えられる人気の秘訣は話のネタが豊富で文章もうまくて面白かったからでしょう。昭和の大プロデューサー小谷正一の人を見る目は伊達ではありません。また、教えていた大学が夏休みに入ると毎年アフリカに研

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