クラゲの気持ちになったことがあるだろうか。 あるわけがない、という答えが大半だろう。 そもそもクラゲには意識がない、という意見もありそうだ。 クラゲに意識があるのかという点については、私自身も「ない」という立場なので、その意見には全面的に賛同するところではあるが、ここは実際問題としてではなく、思考実験として考えていただければと思う。 もし、自分がクラゲだったら。 宇宙にも匹敵する広大な海で、ただ漂うだけの存在。 波に揺られ、海流に運ばれ、浮力と重力に翻弄され、時の流れをたゆたう。 自分から世界に働きかけることはなく、ただ存在するのみ。 海岸に打ち上げられるとか、外敵に捕食されることすら、ごく稀まれだ。 人間である以上は、そんな経験をすることは、ほぼないと言っていいだろう。 あるとすれば、植物状態と診断され、意識がないと思われているが、実は覚醒しているという悲劇的状態——いわゆるロックドイン