かれこれ8年あまり、週に1度、母校の古巣の研究室で事務のアルバイトをしている。ちなみに時給は最近10円上がって、890円。給金からお分かりのように、仕事内容は書類作り、コピー、お茶汲(く)み、教授の話し相手等々。どの大学にも100人単位で在籍する、ごく普通のアルバイト事務員である。 週に1回の勤務なので、本業にさして障りはないはず。だが、あまりに清く正しい時給のせいか、以前は何も言わなかった編集者諸氏も、最近は「まだ続けてらっしゃるんですか?」と驚き顔を隠さなくなってきた。 大学の同僚も似たようなもので、先日、新田次郎文学賞をいただき、新聞に相次いでインタビューが載ってからというもの、「まだうちで働かれるんですか?」と言われることが激増した。勤務態度は真面目(まじめ)なはずだし、お局(つぼね)さまと言うほど邪魔にされているとも思わない。別に辞めて欲しいわけではなく、「なんでまだいるのか分か