あれはわたしが中学生の夏休みでした。 隣の小さな貸家におばあさんが一人で暮らしていました。 地主が多いところで、貸家(ごとき)に住んでいる独り者のおばあさんということで、周りの人はあまり親しくしていませんでした。 母は結婚してこの土地に来ましたが、何年経っても余所者でした。ややもすると、母だけのけ者にされたり、陰口を言われたりもしていたようです。今で思うといじめられていた?という感じでした。 ご近所にそれほど親しい人がいなかった中で、そのおばあさんとは、時々お総菜のおすそわけをしたり、旅行のお土産をやりとりしたりと、時間を掛けて少しだけ親しくなっていきました。 おばあさんはわたしたちにも優しく、回覧板をもっていくと、「ちょっと待ってね」と奥へ行き、「少しだけど」と言って、チョコレートをくれたりしました。玄関口で一緒におしゃべりをしたりもしました。 [広告] ある日、母が「ちょっと」とわたし