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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (42)

  • 数学と数学論のあいだ『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』

    数学の良いところは、待っていてくれること。 もう授業も受験もないので、時間制限は残りのライフのみ。時代の風に翻弄される政治経済歴史と違い、「新しい=良い」教に染まった物理化学生物と異なり、好きなときにやり直せるのが嬉しい。前回のセーブポイントから始められ、学んだだけ進められるのも数学の良いところ。 そして、前回攻略できなかった、ゲーデルの不完全性定理に再挑戦する。8年ぶりの再再読だが、「数式と少女のときめき」は健在で、読み物としても入門書としても抜群に面白い。さらに「数学に苦労していたわたしの高校時代」と「『数学ガール』に没頭していた8年前」を重ね、二重の意味で懐かしい。 全10章に分かれ、最終章(ゲーデルの不完全性定理)に取り組むための伏線が張り巡らされている。嘘つき者のクイズに始まり、ペアノの公理やラッセルのパラドクス、そしてイプシロン・デルタと対角線論法で「数学数学する」準備をする

    数学と数学論のあいだ『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』
    ikeit
    ikeit 2017/06/04
  • 『月がきれい』が好きな人は、『東雲侑子』を読むといい

    『月がきれい』が好きだ。 『月がきれい』は、中学生の淡い恋を柔らかく描いたアニメだ。これを観るのが、楽しみのような苦しみになっている。 初心な二人が、ゆっくり恋を育てていく様子が愛らしく、その嬉しさ恥ずかしさが甘酸っぱく伝わってくる。その一方、劣等感と自己嫌悪に苛まれていた自分の過去を思い出し、苦しくなる。 作中、ある重要なタイミングで、村下孝蔵の『初恋』が流れたとき、涙が止まらなくなった。これ、二人がずっと後になって振り返ったとき、あの日から互いの人生が重なり始めたんだということが、視聴者にだけ分かるという演出になっている。シナリオゲームでいう分岐点だね。「好きだよ」と言えずに初恋が終わるルートなのか、「月がきれい」と伝えた夜から始まるルートなのか。 恋が終わってしまう分岐は沢山ある。「想い」に気づかないうちにクラスのみんなにからかわれるエンド。告白玉砕エンド。LINEがつながらなくてす

    『月がきれい』が好きな人は、『東雲侑子』を読むといい
    ikeit
    ikeit 2017/05/31
  • 女の機嫌の直し方

    男が書いたら炎上必至、女の機嫌の直し方。 胸に手を当て思い当たるトコロ多々あり、ヒヤヒヤしながら読む。と口論になったとき、論点を紙に整理しはじめたら激怒されたことを思い出す。「知性に性差はあるのか?」を書いたとき、女性読者から一方的に批判されたことを思い出す。 書のエッセンスは2chコピペ「車のエンジンがかからないの…」であり、ゆうメンタルクリニック「男と女の会話は違う!」にある。先に"正解"を書いておこう→「正しいのは常に女性であり、男性から共感をもって寄り添うべき」。この"正解"の裏付けと、実践的な対話を含めて解説したのが、書になる。 冒頭はこう始まっている。 女の何が厄介って、些細なことで、いきなりキレることだよな。それと、すでに謝った過去の失態を、何度も蒸し返して、なじること。 著者は脳科学コメンテーター。なかなか面白い肩書で、「男性脳」「女性脳」という言葉を使いながら、主に

    女の機嫌の直し方
    ikeit
    ikeit 2017/05/28
  • ブラック人生における光『あまりにも騒がしい孤独』

    過酷であるほど、彼が大切に抱える光の愛おしさが伝わってくる。その輝きが、知的で美しい存在が、めちゃめちゃに潰されてゆくのを全身で感じる。 「なんでもあり」が小説だが、この苦痛は耐えがたい。を読むのが好きな人ほど、息苦しさを感じるだろう。なぜなら、彼の仕事は、運び込まれてくるを圧縮機で潰し、紙塊を作ることだから。 ばかりでない。肉解体業者が運び込んでくる、蝿がたかった血まみれの紙も一緒に圧縮する。ゲーテと蝿、ニーチェと鼠が一体化された紙塊を、祭壇のように恭しく並べる。知的で美しいものと、醜怪でグロテスクなものが渾然一体となって、読み手の前に並べられる(ここで悲鳴をあげたくなる)。 背景にはプラハの春がある。1968年にチェコスロバキアで起きた民主化運動で、ソ連の軍事介入により、文字通り「圧殺」された。大学教授をはじめとする知識人は職を終われ、言論の自由は奪われ、厳しい検閲と徹底的な統

    ブラック人生における光『あまりにも騒がしい孤独』
    ikeit
    ikeit 2017/05/21
  • 「正しい政策」がないならどうすべきか→コンセンサスの重なりを泥臭く探す

    運転免許の年齢制限をするべきだ。 18歳未満という制限があるように、ある年齢以上にも制限を設ける。強制返納、保険料の加算、速度制限つき車などのオプションを準備し、「高齢者の運転」がない社会をつくる―――そんな話をとする。 飲酒運転の厳罰化のように、制度化されるまでに大勢の犠牲者が出るのだろうねとか、いやいや「多数」はまさにその高齢者なのだから、無理じゃないかしらね、といった話に落ち着く。しかし、我が家にとっての「正しい政策」は、別の家庭にとって「正しい」とは限らない。 『「正しい政策」がないならどうすべきか』は、そんなわたしにとってドンピシャの読書になった。原題は"Ethics and Public Policy"(倫理と公共政策)なのだが、まさにタイトルどおり、「正しい政策」がない場合どうすべきか(どうしてきたか)が書いてある。 急いで補足しておかねばならないのだが、書で取り上げるテ

    「正しい政策」がないならどうすべきか→コンセンサスの重なりを泥臭く探す
    ikeit
    ikeit 2017/05/15
  • 『タンパク質の一生』はスゴ本

    物質がいかに生物になるか、その精妙なプロセスを垣間見ることができるスゴ。 ヒトの体には、60兆個の細胞があり、それぞれ80億個のタンパク質を持っているという。書は、細胞というミクロコスモスで繰り広げられるタンパク質の、誕生から死までを追いかけると共に、品質管理や輸送のメカニズム、プリオン病やアルツハイマー病といった構造異変による病態を紹介する。今までバラバラだった知識がつながるとともに、既知で未知を理解することができて嬉しくなる。 いちばん大きな収穫は、DNAの遺伝情報から複雑なタンパク質ができあがる仕組みを知ることができたことだ。タンパク質を構成する要素は、アミノ酸だ。アミノ酸は、アミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)を持った化合物で、わずか20種類でタンパク質を構成している。 では、どうやってアミノ酸を並べることで複雑な機能を持つタンパク質ができあがるか? 書を読むま

    『タンパク質の一生』はスゴ本
    ikeit
    ikeit 2017/05/12
  • 痛みの科学『痛覚のふしぎ』

    ディズニー映画『ベイマックス』の好きなセリフに、「今の痛みを1から10段階で言うと、どれくらいですか」がある。 主人公ヒロの「痛い!」という言葉に反応し、スキャンして体温や脈拍など定量的な数値から健康状態を把握するのに、「痛み」だけは自己申告してもらうしかないところが面白い。ベイマックスがロボットだからではなく、痛みは主観的なものだから。 だが、分子生物学の進歩に伴い、痛覚に関連する機能分子や遺伝子の構造が明らかになってきている。また、fMRIを始めとする脳のイメージング技術の進展により、脳の活動部位や神経回路網を可視化することで、脳における認知の理解が急速に進みつつある。 その結果、「外部の刺激がなぜ痛みを引き起こすのか」「刺激がどのように脳に伝えられて"痛み"として認識されるのか」といった痛覚のメカニズムが分子レベルで電気生理学的に説明できるようになっている。興味深いことに、「痛み」が

    痛みの科学『痛覚のふしぎ』
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    ikeit 2017/05/09
  • 読まずに死んだらもったいない48作品

    「こんなに面白いのに、読んでないのは損してる」というがある。「面白い」のところには、「タメになる」「心が洗われる」などが入る。徹夜保証の小説だったり、良く生きるための教養書だったり、完結するまで死ねない漫画だったりする。 5/8締め切りで、シミルボンの[「とワタシ」選手権]で募集している。わたしが選考するので、楽しみでならないのだが、待ちきれなくてスゴオフのテーマにした。スゴオフとは、お薦め作品をまったり熱く語り合う読書会なのだが、まさに「読まずに死ねるか!」級の、とっておきが集まった。 まずわたしから。読書猿『アイデア大全』を強力に推す。考えるヒント集みたいな顔つきだが、今晩の献立から一生を賭すに事業学業の進め方まで、なんにでも応用できる。これは、問題解決のための人類の叡智を結集したもの。即効を謳う安直なサプリメントのようなではない。すぐ効くはすぐ効かなくなる。そうではなく、

    読まずに死んだらもったいない48作品
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    ikeit 2017/05/01
  • 生きるための保険『私の生きた証はどこにあるのか』

    自殺した人が遺す言葉は、「死にたい」というよりも「生きたくない」が多いと聞く。 死にたい理由が100あっても、生きる理由が1つでもあれば生きる。何のために生きるのか分からなくなったら、たった一つの死にたい理由に背中を押されてしまうのか。そんな背中に、アンパンマンのマーチは深々と刺さる。 何のために生まれて 何をして生きるのか 答えられないなんて そんなのは嫌だ そんなとき、生きる理由を探すのは危険だ。なぜなら、自分にとって目標としてたもの、夢、愛する人や何かを一つ一つ思い浮かべても、一つ一つ消していくだろうから。生きる理由「だったもの」を拾い上げては捨ててゆく、そんな悲しい作業となるだろうから。 だから、そんなときは、いきなり解答を見よう。『私の生きた証はどこにあるのか』に書いてある。しかも、最初の章にまとめてある。 ほら、難しい数学の問題を解くことを考えてみよう。うんうん悩んで試行錯誤し

    生きるための保険『私の生きた証はどこにあるのか』
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    ikeit 2017/04/25
  • 物語は、騙られるときにのみ存在する『不在の騎士』

    これは面白かった! 中世の騎士道物語のフォーマットに則りつつ、ユーモアたっぷり、ちょっぴりエッチ、ハラハラドキドキさせられる。わずか200ページの中で、読み手を大いに笑わせ、泣かせ、驚かせながら、「存在するとはどういうことか?」という物語的実在論ともいうべき深い問いまで突きつけてくる。 主人公は、白銀に輝く甲冑を身にまとったアジルールフォ。剣は一流、勇猛果敢、教養深く弁も立つ。15年前、とある淑女を悪漢から救い出して以来、数々の武功を立ててきた騎士の中の騎士である。ただし、鎧の中は空っぽだ。肉体を持たず、意思の力だけで存在する「不在の騎士」は存在するのか。 そこで、おっさん世代なら『銀河鉄道999』の車掌さん、若い人なら『鋼の錬金術師』のアルフォンス・エルリックを思い浮かべるかもしれぬ。面白いことに、それ、正解なのだ。 車掌さんが制服の下が空っぽなのを告げるのは、「車掌」という役割がもう必

    物語は、騙られるときにのみ存在する『不在の騎士』
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    ikeit 2017/04/23
  • 形が進化するとはどういうことか『形態学』

    「動物の形が進化するとはどういうことか」という問題に取り組んだ生物学の歴史を振り返りながら、形態学を体系的に説明してゆく。面白いのは、形態学の歴史に、体の構造と形に対する観念の変遷が垣間見えるところ。 1. どのようにそんな形になってきたのか(仕組みの問題) 2. なぜそのような形になっているのか(意味の問題) 「どうしてそうなっているのか」という問いかけには、二つの問題が潜んでいる。1.の仕組みやメカニズムを問う、"how"と、2.の理由や意味を問う"why"である。科学者は、観察や実験を経て1.を分析するとともに、一貫性のあるストーリーで2.を説明づけようとする。 "how"の答えと"why"の答えの間に恣意性や当時の観念が入り込み、話をややこしくする。分けて考えることで議論はシンプルになるにもかかわらず、"why" に答えたい欲望が科学を推進させる。科学の見方にキリスト教的な観念が入

    形が進化するとはどういうことか『形態学』
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    ikeit 2017/04/16
  • メタファーから解く時間論『時間の言語学』

    時間とは何か? 言語学からの腑に落ちる解答。「時間」について思考の奥底で抱いていた認識が暴かれる一冊。 アウグスティヌスは、この問題の質を端的に語る。「時間とは何か。人に問われなければわかっているが、いざ問われると答えられない」。「時間論」といえば、これまで物理学や天文学、哲学や心理学、社会学からのアプローチがあった。それぞれの分野での見解はあるのだが、著者はこれに疑義を呈する。 つまりこうだ。どの学問領域であれ、時間の「流れ」や「進行」を口にしながら、その方向を当然のように過去から未来へと想定している。ビックバンをはじめとして、時間の「矢」は未来へと向かっている―――ここから疑い始めている。そして、「時間とは何か」に直接答えるのではなく、「時間をどのようなものとして捉えているか」という観点から、時間の質に迫る。 著者はレトリックを専門とする言語学者。日語と英語の豊富な事例を駆使しな

    メタファーから解く時間論『時間の言語学』
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    ikeit 2017/04/10
  • 文学の一つかみの砂金『文学理論講義』

    「なぜ学ぶのか?」に対する太宰治の回答が、なかなか素敵だ。 学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。 太宰治『正義と微笑』 学問分野は様々だし、知はアップデートされる。だが、それでも残り続ける砂金というかエッセンスは必ずある。ネット検索に任せて学びを止めるのは、もったいないことだ。 ピーター・バリー『文学理論講義』は、文学における一つかみの砂金に相当する。これは、文学に携わる人にとってのご褒美のような一冊で、文学理論のエッセンスがぎゅっと濃縮されている。これまでの教科書だったイーグルトン『文学とは何か』になり代わる、新しいスタンダードだといえる。 あらゆる知と同じく、文学も守破離のプロセスを経る。すなわち、先達から学び、そこに疑いを抱き、独自

    文学の一つかみの砂金『文学理論講義』
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    ikeit 2017/04/02
  • 都心のジャングルで読書会

    好きなを持ちよって、まったり熱く語り合う。それがスゴオフ。今回は「美と変身」をテーマに、やCDをお薦めしあった。 いつもはラウンジやレンタルキッチンにを持ちより、CDやyoutubeを流しながら、ビールや唐揚をつまみながらの、「読書会という名を借りた宴会」なのだが、今回は趣きが違う。 それは、かなり不思議な場所だった。 六木のど真ん中なのに蒼と木が茂るドーム状の空間で、「いつもと違う感」に満ちていた。ドームに音が反響し、相手の声を耳というより全身で聴く仕掛けになっている。目と耳と肌が非日常を訴えてくるのだが、不快ではなくむしろ癒される空間だった。 実はここ、ポーラとメルセデス・ベンツが提供する「POLA TALKER'S TABLE」という、期間限定の特殊なイベントスペースなのだ。圧倒的な緑の中、ノンアルコールで(ここ重要)、いつものスゴオフをスタートする。 わたしがお薦めす

    都心のジャングルで読書会
    ikeit
    ikeit 2017/03/30
  • 「健康の不在」から健康を考える3冊

    失って初めて分かるもの、それは健康。 風邪で苦しんでるとき、ひどい二日酔いのとき、健康のありがたみが身に沁る。そして、「もっと自分の身体を大事にしよう」と決意するのだが、喉もと過ぎればなんとやら、決意が続いた例なし。普段はあたりまえのように享受しているが、いずれ「あたりまえ」ではなくなるのに。 また、「健康」は最重要なものであり、これに反したり外れたりするものはノーマルではない、という考えがある。確かに健康であることは大切だが、それを強要するのは違う気がする。「健康のためなら死んでもいい」というスローガンや、「健常者」という言葉に違和感を覚える。 今回は、この手垢にまみれた「健康」に、疑いの目を向けてみよう。ずばり健康をテーマにしたは沢山あるが、ここでは、「健康の不在」をテーマに健康をあぶりだしてみよう。 まず直球から。トルストイ『イワン・イリイチの死』を読めば、思わずわが身を抱きしめた

    「健康の不在」から健康を考える3冊
    ikeit
    ikeit 2017/03/23
  • 生命の本質は「膜」である『生命の内と外』

    これは面白かった。生命の質として「膜」に着目し、最新の細胞生物学の知見からその仕組みを解き明かす。 「膜」の内側で自律性を保ちつつ、かつ、「膜」の外側と情報や分子を交換するメカニズムは、そのまま「生命とは何か」に対する一貫的した説明になる。その見事さに驚くと同時に、「私とは何か」をも考えさせる名著なり。 まず、「生きている」最低条件として、外界から「閉じて」いることを挙げる。自己を囲む膜が、外部と内部を区別していなければ、生命としての安定性や自律性は保てないという。そして、「閉じて」いるからこそ、生命維持に関わる種々の化学反応(=代謝)を効率的に、合目的的に行うことができるというのだ。 その一方で、「生きていく」ためには、外界から「開いて」いなければならない。代謝に必要な栄養物や酸素などの物質を取り込むため、さらには、不要となった廃棄物を排出するためには、外の環境に対して開いている必要が

    生命の本質は「膜」である『生命の内と外』
    ikeit
    ikeit 2017/03/22
  • この本がスゴい!2015

    「いつか読む」は一生読まない、いつ読むの? 人生は短いのに、読みたいが多すぎる。残り全部を注いでも、いまのリストは読みきれぬ。己の変化を確かめる、再読リストも増えている。今際に後悔しないため「読んでから死ね」が優先なのに、積まれるスピードさらに上。を通じて出会った人から教わったがまたスゴい。オフ会は危険な場、積読山がマシマシだ。それでも読むしかない、それも今しかない。 「このがスゴい!2015」は、この「今」を積み上げた一年間からピックアップしたもの。ネットや読書会を通じてお薦めされた作品もあれば、書店や図書館で「呼ばれた」もある。非常に愉しいのは、リアルで話し込んでいると、記憶の底からリレースイッチのようにタイトルが"発火"してゆくところ。完全に忘れてた、思いもよらない作品につながってゆく様は鳥肌もの。 世界は対話で拡張する。わたしが知らないスゴを"発火"させる、あなたが凄い

    この本がスゴい!2015
    ikeit
    ikeit 2015/12/04
  • 夏目漱石『こころ』の次に読むべき一冊

    とある女子高生が、国語の授業をきっかけに『こころ』を読んだとする。拒絶から同化まで、彼女の反応は想像にお任せするとして、次にお薦めする一冊は何だろう? ……というテーマが、次回のスゴオフ。「スゴオフ」とは、を持ち寄ってお薦めしあうオフ会なのだが、詳しいことはfacebook[スゴオフ]をご覧くだされ。もちろん、お薦めする作品は、に限らない。映画音楽、コミック、ゲーム何でもござれ。 現国(なのか最早?)のお伴として、読書感想文の定番として、『こころ』は有名になりすぎた作品だ。いまだに「Kが自殺した当の理由」とか「実は先生は死んでない」「あんなの、そもそも恋じゃない」といった挑戦的なネタが定期的に上がってくるのはその証左。映画漫画で扱われたことで、未読でもなんとなく知っているという方も多いのではないだろうか。おかげで、ストーリーを語ってもネタバレ扱いされない、珍しい小説でもある

    夏目漱石『こころ』の次に読むべき一冊
    ikeit
    ikeit 2015/05/08
  • 出版不況の解法として読む『本の声を聴け』

    棚を編集する」という仕事を見ていると、いま出版業界が直面している問題を解くヒントが見える。それは次の二点に集約できる。 年百冊読む一人よりも、年一冊読む百人の“パイを増やす” そのために、最大公約数の書棚に人を集めるよりも、人が集まる場に応じた棚をあつらえる 自転車操業な台所事情と、どの書店でも似たような書棚になっていることは、同じ根っこにある。年々膨れ上がる出版点数の実体は、前のの赤字を後ので埋める「自転車操業」が作り出した現象だ。結果、売場に並んでいる時間は相対的に短くなり、少しでも「動きが悪い」=「売れない」と判断されたは、取って代わられる。 この返のサイクルが早すぎるため、棚づくりまで手が回らず、取次からパターン配されたものを「並べるだけ」の場所になっているのが、今の書店だ。出版点数が多い割に、似たようなばかり並び、棚の魅力が失せている原因は、ここにある。屋の棚か

    出版不況の解法として読む『本の声を聴け』
    ikeit
    ikeit 2013/03/24
    あとでよむ: 出版不況の解法として読む『本の声を聴け』
  • 『垂直の記憶』はスゴ本

    今年読んだ一番。 ギャチュン・カンの代償はあまりにも大きく、一時は落ち込みそうになった。しかし、ギャチュン・カンを選んだことを誤りだと思ったことはないし、アタックしたことに対しても悔やんではいない。むしろギャチュン・カンに挑戦してよかったと思っているくらいだ。あれほどの厳しい状況に追い込まれても、びっくりするくらい冷静に判断を下し、自分の能力を最大限に発揮し、行動できたことに喜びさえ感じている。今まで積み上げてきたことに間違いはなかったのだ。 著者は日を代表するクライマー、山野井泰史。氷と岩の山行を日記のように綴る。「ギャチュン・カンの代償」とは手足の指を十、凍傷で失ったこと。登頂後、嵐と雪崩に遭遇し、・妙子とともに脱出を試みて奇跡的に生還した―――代償になる。 すさまじい登攀への思いと生きる意思に、そのまま撃たれる。「生きている」という強烈な感情が伝わってくる。もちろん、著者のよう

    『垂直の記憶』はスゴ本
    ikeit
    ikeit 2012/11/18
    Reading: 『垂直の記憶』はスゴ本