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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (42)

  • 物理学の限界=その時代の技術の限界 『物理学は世界をどこまで解明できるか』

    「物理学の限界=その時代の技術の限界」であることが分かる一冊。 私たちは、どれだけ世界を知ることができるのか? 科学で説明可能な領域に、根源的な限界はあるのか? もしあるのなら、その限界はどこであり、どこまで実在の質に迫ることができるのか―――わたしが、ずっと抱いていた疑問に、理論物理学者マルセロ・グライサーが応えた一冊。 古代ギリシャの哲学から最新の量子物理学まで、科学史を振り返りつつ、「世界に対する知識」がどのように変遷していったかを解説する。類書と異なるのは、実在論がキーになっているところ。 つまりこうだ。それぞれの時代で現象の説明のために用いられる「科学的」なモデルは、実際にそのような形や性質で存在しているのか? という検証がつきつけられる。ご存知の通り、「科学的」なモデルは、それぞれの時代でに異なり、知識の精度や濃度が蓄積され、更新され、その度ごとに世界のありようは一変してきた

    物理学の限界=その時代の技術の限界 『物理学は世界をどこまで解明できるか』
    ikeit
    ikeit 2017/09/12
  • 『土木と文明』はスゴ本

    土木から見た人類史。めちゃくちゃ面白い。 土木工学とその影響という切り口で世界史を概観する。テーマは、都市、道路、橋、堤防、上下水道、港湾、鉄道などに渡り、テーマごとに豊富な事例で紹介する。土木技術の発展なしには文明も発達せず、また文明の発展につれて土木技術も発達してきた。そうした土木工学と文明の関わりを歴史的に串刺しで見ることができる。 大きなものから小さなものまで、人が手がけてきた土木事業は、それこそ星の数ほどある。それをどうやって整理するか。書は、そのとき直面した問題(治水、防衛、流通、疫病対策等)と、利用できるリソース(人・技術・時間)、そして成し遂げられた結果(土木事業)という観点で整理しているのが素晴らしい。 面白いことに、問題と対策という視点で眺めると、時代や地域を超えた普遍性が現れてくる。異なる時代・地域の人々が、それぞれに知恵を絞り、そのときに手に入るリソースを駆使した

    『土木と文明』はスゴ本
    ikeit
    ikeit 2017/08/31
  • 人は歌で進化した『人間はなぜ歌うのか?』

    「ロックンロールは骨で聴く」というセリフが好きだ。人類の大半が肉体を捨て、電脳世界で暮らすSF映画『楽園追放』のセリフだ。そこでは、音楽を始め、あらゆる快楽を享受することができる。そんな時代に、生身の体を持ったある男が、ロックは骨で聴くものだとつぶやく。 これ、すごく分かる。 彼のようギターを抱えて弾いても分かるし、ライブやコンサートの大音量に包まれても分かる。音楽は、確かに耳からの音を通じて聴くものだが、それだけではない。顔や腕の皮膚や、足下・体の芯から振動を感じ取るものだ。 なぜなら、体の外から入ってきた音楽が自身と一体化し、自分の中に音楽があることに気づくから。わたしの声が、鼓動が、手拍子が、足踏みが音楽と呼応するものだから。ロックンロールに限らず、音楽は身体で感じ、共に歌い、叩き、踊るもの。静聴を求められるクラシックのコンサートでも、最後は万雷の拍手で応えるでしょ。それも同じことだ

    人は歌で進化した『人間はなぜ歌うのか?』
    ikeit
    ikeit 2017/08/24
  • 排他的家族主義の物語『平浦ファミリズム』

    「ラノベばかり読んでるけど国語で全国2位取った」という匿名さんに誘われて読んで驚いた。これ、すらすら読めてズシンとくる。パッケージがラノベなだけでラノベじゃない、「家族とは何か」をシニカルに愛情たっぷりに描いた家族小説なり。 喧嘩っ早いキャバクラ嬢の姉。引きこもりでアニメオタクの妹。コミュ障でフリーターの父。そして、ほとんど高校に行ってない「俺」で構成される平浦家。世間的に見れば「普通」ではない家族が、寄り添うように暮らしている。 日々の生活で明かされる、それぞれの過去がキツい。最初のページで分かるのだが、ベンチャー企業の社長だった母は、既に他界している。美人の姉はもと兄で、性同一障害に苦しむトランスジェンダーである。なぜ妹が引きこもりになったかのエピソードは、怒りのあまり目の前が真っ白になる。人付き合いが下手で、社会不適格者の烙印を押された父は、それでも家族を守ろうと奮闘する。 社会的に

    排他的家族主義の物語『平浦ファミリズム』
    ikeit
    ikeit 2017/08/20
  • あまりにも無色透明な絶望『絶望を生きる哲学』

    理想主義がまぶしい。濁ったおっさんには青すぎて懐かしすぎる。 これ、中学生でかぶれたら、一生治らないヒューマニストになっていただろう。池田晶子の著作から箴言を選り抜いているが、どの言葉も強く厳しく、主語がでかい。 時代が悪いというのなら、あなたが悪いのだ。何もかもすぐにそうして時代のせいにしようとするあなたのそういう考え方が、時代の諸悪のモトなのだ。なぜ自分の孤独を見つめようとしないのか、なぜよそ見ばかりをしているのか。不安に甘えたくて不安に甘えているくせに、なお誰に不安を訴えようとしているのか。(太字化はわたし) 自分の体験から語ろう、体験としての思想をもとうなどというのこそ、戦後民主主義の寝言なのである。体験からしか言えない人は、体験が逆ならば、逆の意見を言うだろう。だから個人の意見などいくら集めてもしょうがなのだ。 第一印象は茨木のり子。それも「倚りかからず」を目指しているように見え

    あまりにも無色透明な絶望『絶望を生きる哲学』
    ikeit
    ikeit 2017/08/11
  • 9/2(土)オフ会やります、テーマは「お金」

    オススメを持ち寄って、まったり熱く語り合う読書会、それがスゴオフ。 読書会と言ったが、に限らず、音楽映画ゲーム、youtubeから展覧会なんてのもアリ。オススメの魅力を語ってもらい、「それが好きならこれなんてどう?」と皆で交流する。を介して人を知り、人を介してに出合う場なのです。 次のテーマは「お金」。マネー、財、税、給料、遺産、富など、お金にまつわるものならなんでもOK。お金が絡むドロドロの人間関係を描いたドラマや、お金の人類史をガチで追いかけたノンフィクション、あるいはお金のない世界を舞台にしたファンタジー(SF?)、お金持ちになる方法を紹介する自己啓発、タイトルに”Money”がある映画音楽って、けっこうありそう。あなたのアイディア次第で、いくらでも膨らみますぞ。 9/2(土) 13:00-18:00、渋谷某所 参加費2000円 お申込はこちら→[スゴオフ「お金」]

    9/2(土)オフ会やります、テーマは「お金」
    ikeit
    ikeit 2017/08/08
  • 生命をメタレベルで考える『生物圏の形而上学』

    これは面白かった。『生物圏の形而上学』は触媒となった一冊なり。 ノンフィクションには、新たな知見を得られるものと、自らの知見と化学反応を起こすものがある。書は後者寄り。「生命とは何か」について、より根源的でメタ的な視点より捉え直し、わたしの思考の倍率を上げ、妄想を煽り立て、アイディアの触媒となった。 読みながら思い出したのは、街灯の下でカギを探すジョーク。深夜、街灯の下でウロウロしている男がいる。カギを探しているという。一緒に探してみるが見つからない。当にここで失くしたのかと聞くと、「いや、失くしたのは向こうの暗がりです。あそこは暗くて見えないので、明るい所で探しているのです」というやつ。真に重要なところではなく、定式化できるモデルに固執する経済学を揶揄するために使われるジョークである。 だがこのジョーク、「生命の起源は地球にある」と主張する一部の生物学者にも適用できそうで楽しい。とい

    生命をメタレベルで考える『生物圏の形而上学』
    ikeit
    ikeit 2017/08/06
  • 恋・宗教・格闘技・幽霊・SF・百人一首……「ハマる瞬間」が面白い

    好きな小説音楽に「最初に」好きになったときを覚えているだろうか。 それは恋に堕ちるような瞬間で、興奮のあまり上昇しているのか墜落しているのか分からず、首まで浸かってから底なし沼であることに気付く。そんな「ハマる瞬間」をテーマにして、さまざまな作品が集まった。 面白いのは、オススメ作品だけでなく、それを語る皆さんの好きっぷり! どんだけそれが好きやねん! とツッコミを入れる一方で、好きが伝染する。それがスゴオフのいいところ。好きなを持ち寄って、まったり熱く語り合う読書会なのだ。に限らず、音楽映画ゲームなんでもあり。最新情報はここでどうぞ。 [ facebook「スゴオフ(Book Talk Cafe)」 ] まずはわたし、TVアニメ「月がきれい」を入口に、「好きな人が自分を好きになる」は奇跡の一つである話をした。『月がきれい』が好きな人は、『東雲侑子』を読むといいの圧縮バージョ

    恋・宗教・格闘技・幽霊・SF・百人一首……「ハマる瞬間」が面白い
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    ikeit 2017/07/30
  • ユニークな分析哲学入門『今夜ヴァンパイアになる前に』

    「ヴァンパイアになれるチャンスがある」思考実験から始まる分析哲学。 もちろん「ヴァンパイアになる」はメタファーだ。結婚する、子をもつなど、見通しが不透明で、人生を劇的に変えてしまうような判断を指す。この決断を迫られたとき、どうすれば合理的な意思決定が導けるかを、徹底的に考え抜く。深くて濃くて、ユニークな一冊。 象徴的とはいえ、「ヴァンパイアになる」は言いえて妙だ。あなたの友人の何人かは既にヴァンパイアになっていて、その生活形態や価値観について、色々と教えてくれる。人ではとても理解できない仕方で、この世界を理解することができるという。ただ、ヴァンパイアとしての理解を、人に説明することは、とてもできない。この充足感と万能感は、文字通り人知を越えており、それがどんなものであるかを知るには、ヴァンパイアになるしかない。 問題はここからだ。この状況で、あなたは一体、どうやって十分な情報に基づいた選択

    ユニークな分析哲学入門『今夜ヴァンパイアになる前に』
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    ikeit 2017/07/24
  • 『すごい物理学講義』はガチで凄かった

    スゴとは「凄い」の略だ。読前読後で世界が改変されてしまうだ。 もっと言うと、世界が変化するのではなく、世界を視る「わたし」が更新される。『すごい物理学講義』は、まさにそういう一冊。わたしが知っていた世界について、その理解を深めるとともに、知識や概念として知っていた枠組みを、一変させてしまった。 書の前半は、「世界のありよう」について歴史を振り返りつつ、アインシュタインの一般相対性理論と量子力学の統合について、徐々に焦点を当てていく。ここでの面白い指摘は、「目に見えている世界」ありのままに見ることを阻むものは、われわれ側の予断であること。著者は、世界の理(ことわり)を善悪の観点から理解しようとしたプラトンやアリストテレスを挙げながら、目的論的な見方を批判する。 そして、ニュートン的世界観がどのように乗り越えられ、ファラデー、マクスウェルを経て、アインシュタインと量子力学で、時間と空間

    『すごい物理学講義』はガチで凄かった
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    ikeit 2017/07/16
  • いつ高齢者から運転免許を取り上げるか『高齢ドライバーの安全心理学』

    明らかに運転できていないドライバーがいる。一時不停止、信号無視、蛇行運転(ハンドルをちゃんと握れてない? わき見?)。運転席を見ると100%高齢者だ。こうした光景は毎週見かける。なぜ毎週か? わたしがサンデードライバーだからだ。 いっぽう、 高齢者の交通事故テレビや新聞をにぎわしている。認知症の高齢者が、歩行者をなぎ倒し、コンビニに突っ込むニュースはよくあるが、認知症に限らず、ほぼテンプレのように「アクセルとブレーキの踏み間違い」「高速道路を逆走」「何が起きたかよく覚えていない」というお決まりのパターンとなっている。 自動車の運転に必要なスキルとして、「認知」「判断」「操作」が挙げられる。加齢に伴い、こうした能力が低下することは事実だ。認知能力が低下することで判断が遅れ、操作が間に合わなくなる。このとき、車は1トンの凶器と化す。何歳でどの程度の能力低下があるかはバラつきがあり、一概に何歳

    いつ高齢者から運転免許を取り上げるか『高齢ドライバーの安全心理学』
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    ikeit 2017/07/11
  • 徹夜小説『ウォッチメイカー』

    「屈辱」というゲームがある。好きが集まって、未読のを次々を告白するゲームだ。 大事なのは、「みんなが読んでるのに、自分だけ読んでいない」作品だと、ポイントが高いところ。つまり、読んでて当然のを読んでないと告白する「屈辱」を味わうゲームなのだ。 この「屈辱」を、ミステリ好きの読書会でやったことがある。わたしが、「ジェフリー・ディーヴァーは一冊も読んでないんですよね」とつぶやいたところ、そこに居た全員(?)から、哀れむような目で見つめられた。そんな悲しい目で見なくても……と言ったら、「羨ましいんだよ!」と全員(!)からツッコミを受けた。 ジェフリー・ディーヴァーを読んでいないミステリ好きは、「ミステリ好き」と名乗る資格があるかどうかは別として、幸せものらしい。なぜなら、これから絶対に面白いにどっぷりとハマれることが保証されているから。 そこで議論が百出する。やれ『魔術師(イリュージョニ

    徹夜小説『ウォッチメイカー』
    ikeit
    ikeit 2017/07/09
  • 7/22(土)オフ会やります@渋谷

    好きなを持ち寄って、まったり熱く語り合う読書会、スゴオフ。 に限らず、音楽映画ゲームなんでもあり。演劇や展覧会やブログの紹介なんてのもあったし、とにかく「私のイチ推し」を語ってほしい。あなたの「好き」が好きな人が、「それが好きならコレなんていかが?」とお勧めしてくるかもしれない。それは、高確率であなたの知らない「好き」になることを請け合う。 を介して人を知り、人を介してに会う、そんな読書会なり。 全体の流れはこんな感じ。 テーマに沿ったお薦め作品を持ってくる テーマは「SF」や「」「ホラー」など事前に相談して決める。お薦め作品は、(物理でも電子でも)、映像(DVDの映画やYoutubeの動画など)、音楽ゲーム(PS4からボドゲ)など、なんでもあり。並べて皆に見せびらかそう。 お薦めを1人5分くらいでプレゼンする 「ここが刺さった」とか「これは音読する」などやり方自由。な

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    ikeit 2017/07/08
  • 東大の科学がスゴい『科学の技法』

    東大の理系は、一年生から「科学の技法」を叩き込まれる。 『知的複眼思考法』を読んだとき、批判的に読み・考えるトレーニングを徹底させる東大の文系が羨ましいと思った。『科学の技法』を読んだいま、科学の技法をゼミナール形式で学べる東大の理系が羨ましい。 東大で始まった新しい試み「初年次ゼミナール理科」が凄い。 理系の一年生は全員必修で、1クラス20名の少人数を、教師+TA(ティーチングアシスタント)できめ細やかに指導する。学術的な体験(アカデミック体験)を通じて、サイエンティフィック・スキル(科学の技法)を修得することを目的としている。 この科学の技法が羨ましい。前半が「基礎編」で、あらゆる研究をする上で基礎的となるだけでなく、仕事にも必須なスキルが紹介されている。後半が「実践編・発展編」で、研究チームを意識できるようなゼミを「ラボ」として開講し、そこで基礎的な演習を行う(垂涎だらけなり)。 ◆

    東大の科学がスゴい『科学の技法』
    ikeit
    ikeit 2017/07/02
  • 猫町倶楽部の読書会『利己的な遺伝子』

    最大の読書会「町倶楽部」が楽しかった。 課題図書を読んできて、グループディスカッションで交流する。2006年に発足し、東京、名古屋、京都で月例会、5000人超の参加者、商業的なランキングと一線を画し、硬めのを俎上に、と人・人ととの出会いをプロデュースしてきた。好きなを持ち寄って、まったり熱く語り合う読書会「スゴオフ」とは偉い違う。 参考になるかなーと思いながら興味半分・視察半分で参加してきたんだが、これがまためっぽう面白い&タメになる。主催の方、運営の方、ボランティアの方、お疲れ様でした、大変勉強になりました。 さて、行ったところが、六木のシスコシステムズ。広~いトレーニングルームに100名超が集まって、1グループ8名ぐらいに割り振られる(美男美女ばかりで、うだつの上がらぬオッサンは私一人だったことを報告しておこう)。そして課題(ドーキンス『利己的な遺伝子』)について1

    猫町倶楽部の読書会『利己的な遺伝子』
    ikeit
    ikeit 2017/06/25
  • 胃がん100万、乳がん200万、肺がんだったら300万『がんとお金の本』

    がんになったときの、「お金」関連がまとめられている。検査や治療の明細、公的医療費助成制度の活用法、収入や生活の不安を支える公的制度など、「生きる」費用対効果を考える上で、有用な一冊。国立がん研究センター監修。 タイトルはもちろん乱暴だ。がんの発生場所、病期(ステージ)、治療方法、入院期間などによって、まるで違う。「がん」という名前だけで、全然別の病気に見える。例えば、胃がん100万の事例は、「ステージI期、腹腔鏡下幽門側胃切除術のみ、11日間入院」の場合。大動脈リンパ節転移で切除不能だと化学療法のみとなり、46万と半額になる。ステージが進むほどやれることが限られてくる傾向がある。 問題は、がんになるか、ならないかではない。問題は、「いつ」がんになるかということと、「どの」がんになるかである。 日人の2人に1人はがんになるのなら、がんに罹ることを前提としたほうがいい。問題は、それがいつ発見

    胃がん100万、乳がん200万、肺がんだったら300万『がんとお金の本』
    ikeit
    ikeit 2017/06/22
  • 劇薬小説『異形の愛』

    「劇薬小説」というジャンルがある。心をざわめかせ、脳天を直撃し、己を打ちのめすような小説だ。憎悪、歓喜、憤怒、悲嘆、さまざまな感情を爆発させる猛毒だ。 怖いもの知らずで聞いて回り([人力検索はてな:最悪の読後感を味わいたい])、エロもグロもゴアも手当たり次第に読んできた。10年かけて渉猟してきたベスト(ワースト?)5はこれ→([劇薬小説ベスト])。 しかし、『異形の愛』は読めなかった。 正確には、序盤までだった。予備知識ゼロで手にとって、これが一体、何の小説であるかに気づいたとき、二度と触れられなくなった。最初に書を手にしたとき、まだ幼いわが子と重なってしまい、先に進められなくなってしまったのだ。 これは、巡業サーカスの家族の物語である。団長であるパパは、薔薇の品種改良に想を得て、わが子の品種改良を試みる。すなわち、子どもが「そのままの姿」で一生べていけるよう、意図的に畸形を目指すので

    劇薬小説『異形の愛』
    ikeit
    ikeit 2017/06/18
  • 『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(西原理恵子)は、娘の幸せを願う全ての親に伝えたい

    これは重要な一冊。これを娘に伝えられるかどうかが、娘の幸せを左右することだから。年頃の娘を持つ全ての親に渡したい。 中身はいつものサイバラ節と、ちと違う。「母」という立場から反抗期の娘に宛てた手紙のような、それまでの半生を振り返って「いろいろあった」とつぶやくようなエッセイなり。さらりと書いてあるくせに、幸せの勘所というか、不幸を避ける考え方のようなものがきっちりとまとめられている。 過去作を読んできた方には、目新しいものはないかもしれぬ。だがこれは、西原理恵子が伝えてきた「金の話」「男との関係」「幸せへの近づき方」の、いわばエッセンスを凝縮したものになる。一番重要なところを引用する。 大事なのは、自分の幸せを人任せにしないこと。そのためには、ちゃんと自分で稼げるようになること。 そのために、最低限の学歴は確保する。できれば、資格もとって、スキルアップしておく。結婚するときは、夫に内緒の貯

    『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(西原理恵子)は、娘の幸せを願う全ての親に伝えたい
    ikeit
    ikeit 2017/06/14
  • エッチする直前こそが人生だ『初情事まであと1時間』

    タイトルまんま「初エッチするまであと1時間」のカップルを描いた、シチュエーション恋愛オムニバス。ニヤニヤが止まらないまま進んでいくと、初々しさにほっこりしたり、健気さにほろりときたり、切なさに撃ち抜かれたり。 あくまでも、エッチするまでの1時間なので、性行為そのものは描いてない。「あと50分」「あと31分」といったカウントダウン的なナレーションが入るが、「スタート!」以降は「ご想像にお任せします」状態となる。だから表紙に「成人向け」マークは入っていないのだが……のだが、これが読むほうにとってはとってもドキドキもの。 なぜなら理由は2つある。 一つは、典型的な「やれる」パターンの場合。「両親が旅行の彼女の家に招かれました」など、リビドー全開のシチュエーション。にもかかわらず、二転三転する様がワクワクを加速させる。もう一つは、どう考えても「やれない」パターン。こじらせ処女、腐らせ童貞、生命の危

    エッチする直前こそが人生だ『初情事まであと1時間』
    ikeit
    ikeit 2017/06/11
  • 東大・京大で『勉強の哲学』が一番売れている理由「勉強するとキモくなる」

    「勉強とは何か?」を根源的に考えた一冊。一言なら「勉強とは変身である」になる。 巷に数多のノウハウではない。意識高い系の自尊心をくすぐるではない。勉強するとはどういうことか、勉強することで何が起きるのかを、言語と欲望の問題にまで踏み込み、掘り下げる。 議論のバックグラウンドに、フーコーの権力システム、ドゥルーズ&ガタリの脱コード化、さらにウィトゲンシュタインの言語観をも引き込んでいるが、咀嚼しきった上で原理的に考え抜く、その知的格闘が面白い。 勉強すると何が起きるのかを考える際、勉強する「前」はどうなっているかに着目する。自分が話す(=考える)言葉やコードは、そのときに自分がいる環境に依存しているという。半径5mの仲間や学校、家族、手元の端末のSNS、マスコミ、社会などから、「こうするもんだ」というコードにノッて話し、考え、行動する保守的な状態だという。 それが、勉強することにより、慣

    東大・京大で『勉強の哲学』が一番売れている理由「勉強するとキモくなる」
    ikeit
    ikeit 2017/06/06