……そのうち彼女が急に顔を上げて、私をじっと見つめたかと思うと、それを再び伏せながら、いくらか上ずったような中音で言った。「私、なんだか急に生きたくなったのね……」 それから彼女は聞えるか聞えないか位の小声で言い足した。「あなたのお蔭で……」 堀辰雄 『風立ちぬ』 春 『風立ちぬ』 は昭和11〜13年に発表された中編小説。 《私》 の婚約者である節子は肺結核を患っている。当時、死の病であった彼女の結核が悪化したため、富士見高原の療養所へ入院した節子に付添って、《私》 はそこで数ヶ月を過ごす。 療養所での二人のロマンス、やがて訪れる節子の死、悲しい別れ――という話だとばかり思っていたら、途中から全く違った方向へ進んでしまったので驚いた。 小説の真ん中あたりで 《私》 は 「仕事」= 執筆を始めるのだが、後半、「冬」 の章以降はその執筆内容、即ち彼の書いたノートになっている。ノートには各々日付
「風立ちぬ、いざ生きめやも」の部分を説明すればよろしいのでしょうか? ・風立つ: 風が出てきた。 「立つ」とは、その時に、風が一回だけ、さあっと通り過ぎたというものではなく、今まで静かだった辺り全体に、風が吹き始めたという感じです。 ・(風立ち)ぬ: 完了・強意の助動詞終止形。 動詞が示す動き(ここは風立つ)が完了したことを示します。 ということで、「風立ちぬ」は「風が立った」とか「風が出てきた」などと考えればいいと思います。 ・いざ: さあ、いよいよだ 「さあ、でかけよう」にくらべて「いざ、出発」と「いざ」を使うと強い意思を感じるようになります。 ・(生き)め: この場合は意思の助動詞「む」の已然形 意思:生きていこうか 「可能」ととれば「生きることができるだろうか」になります。しかし、ここは意思でしょう。 ・(生きめ)やも: 反語の助詞 「~か、いや~ではない」 ということで、「いざ生
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