ローラのオリジナル [著]ウラジーミル・ナボコフ/ナボコフ 訳すのは「私」―自己翻訳がひらくテクスト [著]秋草俊一郎[評者]山形浩生(評論家)[掲載]2011年4月24日著者:ウラジーミル・ナボコフ 出版社:作品社 価格:¥ 2,940 ■難解な大作家へ導きの微光 ナボコフは二十世紀後半の大作家だが、一般受けはしにくい。感情移入やドラマ重視の読み方を軽蔑した彼の作品は、ことばやイメージの断片が記憶と戯れ連想の鍵を開ける中で変によじれる。最初は見どころが見当もつかない。 が、その助けになりそうな本が二冊。まずは未刊の遺作『ローラのオリジナル』。著者が死後焼却を命じていた草稿カードの束とその翻訳だ。 草稿なので、全体像はあいまいだ。が、その分ナボコフが重視した細部のしかけは見えやすい。さらに訳者は、各種の推理を繰り出して小説全体の復元を試みつつ、微細なポイントも詳しく解説してくれる。だじゃ