戦前の廃娼運動について、1931年6月11日付けの読売新聞に河崎夏子氏*1の『婦人評論 廃娼運動と私の見方』と題したコラムが掲載されている。その文章の中に次のような一節がある。 【3】私共はこのような提言をする前に、も少し現実的な立場から公娼制度を廃棄したいのである。それは公娼制度に見られる人身売買の性質が、封建的だからである。自分の意志で自分の労働を売るのでなしに、家族制度の犠牲となっている場合が多いことを言いたいのである。親の苦労を救うために娘が……でなしに親が自分の娘を売り飛ばすというような場合がその一例である。 読売新聞1931年6月11日朝刊9面より引用。漢字と仮名遣いは現代風に改めた。強調部は筆者による。 当時は東北の農村などで貧困を背景とした娘の身売りが横行したことは良く知られる。娘を売り飛ばした親たちとて大なり小なりの葛藤はあったろうが、当時の家族制度に内在する女子の人格軽