物故会員 伊藤 整 いとう せい 小説家・文藝批評家・詩人 1905 - 1969 北海道に生まれる。近代日本の文壇文学史を把握し形成する上で不滅の業績を積み上げた昭和の文学者として、永く記憶される。その批評は常に時代の先頭を切り開いて鮮明に視野を広げたが、その支えに実証的また洞察に富んだ研究と実作者の体験があった。 掲載作は、昭和三十五年(1960)「新潮」九月号初出、この一文でもって「電子文藝館」の展示一切に展望が利くと断言できるほど、剴切かつ適切な「必読」の優れた道案内でもある。 求道者と認識者 明治以来の文学史の整理もずゐぶん進んで来た。中でも文献や実地調査による実証的研究といふものが、手がかりが多いので最も進んでゐる。個人の力でまとめられた実証的な業績も多いが、集団の力による昭和女子大の「近代文学研究叢書」のやうなものも、新しい方法による業績として見のがすことができない。この分野