『トルコのもう一つの顔(中公新書)』(小島剛一/中央公論社) トルコに住む少数民族をめぐる冒険 著者の小島剛一さんは、フランス在住の言語学者。ストラスブール大学での学生時代、トルコ語の方言を対象にした博士号を取得するため、フランスとトルコを行き来しているいうちに、トルコ国内の少数民族の言葉に関心を抱くようになったという。 けれども当時、トルコの政府は「トルコ国民は全てトルコ人であり、トルコ人の言語はトルコ語以外にない、トルコ語以外の言葉はトルコ国内に存在しない」という公式見解を持っていたことから、現地での調査には様々な困難が伴うことに。 事実を述べるだけで、国家叛逆の罪に問われるという状況のなかを生きてきた人びと。なかには、「民族」としてのアイデンティティは保ちながらも、何世代にもわたる長期間、その「言語」を使用できなかったため、自らの「言語」を忘れてしまった人びとまでいたという。 『トル