ブックマーク / magazine-k.jp (6)

  • 「まちおこし小説」が投げかける文筆の公共性

    町に向き合って書くこと 特定の土地にこだわって書く作家がいる。 函館の物語を書き続けた佐藤泰志、紀州熊野を舞台にした「紀州サーガ」で知られる中上健次、最近だと大阪を書き続ける西加奈子がいる。多くの場合、作家と結びついた土地は故郷か居住地である。 その一方で村上龍のように横浜に住んでいながら、横浜らしさをまったく感じさせない作家もいる。過去においてはデビュー当時住んでいた福生の物語『限りなく透明なブルー』や、故郷・佐世保での高校時代を追想した『69』のように土地と結びついた作品をいくつか執筆している。しかし現在彼が住んでいる横浜を舞台として選んだ作品は寡聞にして知らない。たぶん村上にとって、横浜の郊外に向き合う必然性は希薄なのだろう。 では必然性がないにもかかわらず特定の土地を舞台にして書かなければならない場合、作家はどのような思考を経て作品をつくっていくのだろうか。 なぜこんな疑問を持った

  • 新年に考える〜『21世紀の資本』を読んで

    あけましておめでとうございます。今年も「マガジン航」をよろしくお願いいたします。さっそく新年最初のエディターズ・ノートをお送りします。 今年に入って私がはじめて買ったは、トマ・ピケティの『21世紀の資』(みすず書房)でした。すでにアメリカではベストセラーになっており、昨年12月に日版が刊行されると国内でも大きな話題となりました。定価が5940円(体5500円)もする高額なであるにもかかわらず、アマゾンでも日時点でランキング総合一位となるなど好調で、さっそく重版がかかったようです。 海外でベストセラーになったからといって、日でも同じように売れるとは限らないのが出版ビジネスの難しいところですが、『21世紀の資』の翻訳版は日でも同様に成功しそうです。事前にさまざまな雑誌が特集を組んだり、解説記事が書かれたこともありますが、そうしたことがなされた理由の一つとして、ウェブサイトでの

    inside-rivers
    inside-rivers 2015/01/06
    今年はピケティの議論を土台として、どのような社会を作っていくのか。そのことに意識的になる年にしたい。
  • 文化庁eBooksプロジェクトは何を残したか

    文化庁は3月7日、今年の2月1日から3月3日にかけての期間限定で実施された「文化庁eBooksプロジェクト」で配信された電子書籍のダウンロード数を発表した。同プロジェクトは「国立国会図書館デジタル化資料」のうち13作を「電子書籍」としてリパッケージし、電子書籍ストアを介して一般ユーザーに配信するという邦初の実証実験だった。 この報告書によると、実証実験におけるダウンロード数上位作品は以下のとおりである(詳報はこちらを参照:「文化庁eBooksプロジェクト」について)。 第1位 酒井潔『エロエロ草紙』(11,749 ダウンロード) 第2位 芥川龍之介『羅生門』(10,136 ダウンロード) 第3位 『平治物語(絵巻)』(8,389ダウンロード) 配信が第1回(2月1日〜)と第2回(2月8日〜)に分かれたため、上位を占めたのはすべて第1回配信分となったが、第2回配信作品だけでみると、第1位は

  • ブックデザインの鬼才チップ・キッド

    チップ・キッドと最初に会った(というか、見た)のはいつだったろう? 有名な装丁家と言えば真っ先に挙がる名前だし、出版記念パーティーやランダムハウスの社内で見かけると「うぉっ、チップ・キッドいたー」というくらい、スーパーノヴァなオーラ出してる人だった。 そのチップ・キッドがTEDに登場しているので、まぁ、自分の仕事についてはともかく、アメリカで着々と進みつつある書籍のデジタル化についてはどう思ってるんだろうと知りたくなって見てみた。マジでこんなカッコしてて、ついでにこのビデオ(TEDでの講演「笑い事ではないけど笑えるのデザインの話」)で披露しているタコ踊り(クラゲ踊り?)をやってるところもパーティーで見たことある。 チップ・キッドがデザインしたの表紙と聞いて、何も浮かんでこない人のために彼の経歴や代表作をかいつまんで書くと、彼は泣く子も黙る老舗文芸出版インプリントであるアルフレッド・クノ

  • 電子書籍が死んだなら

    を買ったとき、そのが死ぬことについて考える人はあまりいない。盗まれたり火事にあったり、あるいは誰かにあげたり売ったりしなければ、はいつまでもあなたの下で生き続ける。日は総じて品質が高いので、多少折れ曲がり、汚れ、黄ばんでも、読むことに支障はないだろう。それはが絶版になろうと、出版社が倒産しようと変わらない。 電子書籍は違う。電子書籍は突然死ぬ。つまり、読者の意図せぬ形で読めなくなる。実際、これまでにいくつもの電子書籍サービスが終了となり、私たちの電子書籍が読めなくなった。これは控え目に言っても、電子書籍の弱点である。読者は電子書籍の死にどう備えるべきだろうか。そして電子書籍ビジネスは死とどう向き合うべきか。 さまざまな死のかたち ・ストアの死 お気に入りの書店が閉店になったら、他の書店を探さなければいけない(ジュンク堂新宿店……)。一方、電子書籍ストアが閉店した場合は、他のス

  • 大きな写真集を売る小さな本屋さん

    このところの電子書籍の台頭のせいで、アメリカではさぞかしたくさんの小さな街角の屋さんがつぶれているだろうと思われがちだが、実態は少し違う。拙ブログでも何度も触れているが、「インディペンデント」と呼ばれる零細書店は既に大型チェーン店だの、オンライン書店だのという「敵」との歴戦をくぐり抜けてきたしぶとさを持ち合わせているところが多い。 もちろん、こっちでも毎日のようにどこかの町でずっと続いてきた書店がクローズ、というニュースは聞く。だが実際には、書店が会員となる全米書店協会(ABA=American Booksellers Association)に新規登録した書店がここ2年ほどでは増えており、特に今年度は100店を超える新たな書店が参加したという。 我が町ニューヨークでは、経済的なトレンドがブルックリンに向いているので、新しいお店ができたと聞いてもブルックリンばかりだったのだが、ここマンハ

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