婚活小説としての痴人の愛 谷崎潤一郎の『痴人の愛』を読んだ。馴染み深い表紙の新潮文庫版ではなくて中公文庫版。Kindleで買うと新潮文庫版が490円で、中公文庫版が350円だったという即物的な理由なのだけど、そもそも電子書籍で価格差が発生することがあるのだと思った。栞紐がない新潮文庫には今ひとつ肩入れできない。学生時代に途中までは読んだような気がするのだけど、実は最後まで読んだのは今回が初めてだった……と思う。 痴人の愛(新潮文庫) 作者:谷崎潤一郎新潮社Amazon 話のスジとしては、勤勉で中年に入りかけた譲治(ジョージ)がカフェーで給仕をしている奈緒美(ナオミ)の佇まいや名前にハイカラ性を見出して引取り、「友達のような夫婦」として甘やかしつつも淑女としての教育をしながら「お伽話の家」の中で怠惰に暮らす。このあたりは、ちょっとした婚活小説になっている。 しばらく経ってナオミも外出するよう
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